直心の交わり――若い店主から返ってきた言葉は、私の想定を超えるものだった。「じきしんのまじわり」とは、茶聖と言われた商人、千利休が遺した茶の湯の精神。茶事において、清らかでお互いの心を思いやった素直で深い心の交流と、相手に心を寄せる大切さをいう。
その店「ワンルームコーヒー(1 ROOM COFFEE)」は店名の通り、席数もそれほどない小さな店。東京のターミナル駅の一つ、池袋駅を起点とする東武東上線で四つめの中板橋駅から徒歩5分。人通りも少ない住宅街の中にある。ここは私の実家からほど近い、懐かしいまち。1月の寒い週末に久しぶりに訪れ、そこに暮らす知人の導きで知ることができた。
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