日本・東京商工会議所はこのほど、「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」結果を公表した。調査結果によると、人手不足の状況について、人手が「不足している」と回答した企業は65.6%(23年2月調査64.3%)で、3社に2社が人手不足の厳しい状況が続いている。
業種別では、建設が(78.9%)、運輸(77.3%)、介護・看護(76.9%)、宿泊・飲食(74.4%)、情報通信・情報サービス(71.6%)で7割超え。最も低い製造業でも57.8%と5割を超え、あらゆる業種で人手不足の状況が見られる。
人手不足への対応方法については「採用活動の強化」が81.1%で最多。次いで、「事業のスリム化、ムダの排除、外注の活用」(39.1%)、「女性・高齢者・外国人材など多様な人材の活躍推進」(37.3%)、「従業員の能力開発」(34.6%)、「デジタル・機械・ロボットの活用」(26.6%)の順で多くなっている。
24年度に「賃上げを実施予定」とする企業は61.3%で、前年度調査から3.1ポイント増加。うち、「業績の改善が見られないが賃上げを実施予定(防衛的な賃上げ)」は60.3%と6割を超えた。
従業員規模別に見ると、規模が小さい企業ほど、「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は低く、5人以下の企業の「賃上げ実施予定」は32.7%で、うち、「防衛的賃上げ」は66.7%。「賃上げを見送る予定(引き下げ予定を含む)」は16.8%だった。 業種別に「賃上げを実施予定」とする企業を見ると、介護・看護が66.7%で最多。次いで、製造(64.2%)、建設(63.4%)、その他サービス(63.0%)、卸売(62.4%)、情報通信・情報サービス(60.5%)の順で多く、小売(48.7%)、宿泊・飲食(54.1%)など、対消費者・BtoCを中心とする業種が低い結果となった。 24年度の賃上げ率の見通しについては、「3%以上」とする企業が36.6%と前年度調査結果に比べて3.1ポイント増。「5%以上」とする企業も10。0%あった。 賃上げの内容については、定期昇給が最多で70.4%(前年度から5.7ポイント減)。ベースアップは49.1%(同8.3ポイント増)、賞与・一時金は35.7%(同5.5ポイント増)となっている。
過去最高だった23年10月の最低賃金引き上げ(全国加重平均1004円)を受け、「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」企業(直接的な影響を受けた企業)は38.4%と引き続き高い水準。一方、人手不足や物価上昇が進む中、「最低賃金を上回っていたが、賃金を引き上げた」とする企業は29.8%と昨年度から5.2ポイント増加した。
現在の最低賃金について、「(大いに・多少は)負担になっている」と回答した企業は65.7%で昨年度から10.6ポイント増加。業種別では、宿泊・飲食(88.3%)、介護・看護(79.4%)、小売(78.2%)、製造(73.9%)、運輸(73.5%)で7割を超えており、負担感が強い結果となっている。
2024年度の最低賃金改定に対する考えは、「引き上げはせずに、現状の金額を維持すべき」との回答が最多で38.2%。次いで、「今年度と同水準(全国加重平均43円増)と同水準で引き上げるべき」(17.5%)、「今年度を下回る範囲で引き上げるべき」(16.6%)の順で多い結果となった。一方、「今年度を上回る水準で引き上げるべき」は7.6%、「引き下げるべき」は3.5%となっている。
調査対象は、全国47都道府県の中小企業6013社。調査期間は、2024年1月4日~26日で、回答企業数は2988社(回答率は49.7%)だった。
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