日本商工会議所の三村明夫名誉会頭は2月15日、日商第734回常議員会で「人口戦略会議における『政策提言』中間報告について」と題して講演した。「人口戦略会議」は三村名誉会頭が議長を務める民間の有識者らで構成する会議体。三村名誉会頭が提言書「人口ビジョン2100」の概略を紹介するとともに、同会議メンバーの山崎史郎内閣官房参与(社会保障・人口問題)が提言内容を説明した。
提言書では、人口減少と歯止めのかからない少子化の流れに危機感を示すとともに、三つの基本的課題として「国民の意識の共有」「若者、特に女性の最重視」「世代間の継承・連帯と『共同養育社会』づくり」の3点を提示。2100年に8000万人で人口が定常化することを目標に、人口減少の流れを変える「定常化戦略(人口減少のスピードを緩和させ、最終的に人口を安定させることを目標とする戦略)」と「強靭化戦略(質的な強靭化を図り、現在より小さい人口規模であっても、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する戦略)」の実行による「未来選択社会(未来として選択し得る望ましい社会)」の実現を提案している。
目指すべき社会の将来像である「未来選択社会」の具体的な姿については、「一人ひとりが豊かで、幸福度が最高水準の社会」「個人と社会の選択が両立する社会」「多様なライフスタイルの選択が可能な社会」「世代間の『継承』と『連帯』を基礎とする社会」「国際社会において存在感と魅力のある国際国家」の五つを示した。定常化戦略における論点については、「若年世代の『所得向上』『雇用改善』が最重要」「『共働き・共育て』の実現」「多様な『ライフサイクル』が選択できる社会づくり」「若い男女の健康管理を促す『プレコンセプションケア』」「子育て支援の『総合的な制度』の構築と財源確保」「住まい、通勤、教育費など(特に「東京圏」の問題)」の7点の重要性を強調。強靭化戦略では、「人への投資の強化」「一人ひとりが活躍する場の拡大」「人口減少地域で医療・介護、交通・物流、エネルギー、教育などのサービスの質的強靭化と持続性向上」「日本での活躍が世界での活躍に直結するような『イノベーション環境』の整備」などを論点として整理している。
また、「永住外国人」「定住外国人」の政策についても言及。「人口減少を補充するための『(補充)移民政策』はとるべきではない」とした上で、労働目的を中心とする外国人に対する総合戦略の策定と、その政策を遂行する体制の整備、政策の「司令塔」の設置も求めている。
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