2025年4月13日に開幕を迎える「大阪・関西万博」(正式名称:2025年日本国際博覧会)まであと1年に迫った。その見どころや注目すべき特徴、現段階での進捗状況などを2025年日本国際博覧会協会に聞くとともに、万博開幕に対する全国的な機運醸成に向けて、大阪商工会議所が中心となって進めている商工会議所の動きをお伝えする。
「いのち」に焦点を当てて未来社会を考える万博で社会課題の解決手段を世界に示す
「大阪・関西万博」は、大阪市の夢洲(ゆめしま)を会場に、来年4月13日から10月13日までの184日間にかけて開催される。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした今回の万博は、6カ月間の開催期間中で2820万人もの来場者が見込まれている。その大阪・関西万博のコンセプトや見どころなどについて、2025年日本国際博覧会協会 広報・プロモーション局長の小林浩史さんに話を聞いた。
社会課題の解決の手段を全世界で考えていく場に
─今回の万博は名称が「大阪万博」ではなく「大阪・関西万博」となっていますが、これはどのような理由からなのでしょうか。
小林浩史さん(以下、小林) 正式名称は「2025年日本国際博覧会」で、サブタイトル的に「大阪・関西万博」となっています。これは、今回の万博を大阪市や大阪府だけでなく関西全体への広がりを考え、取り組みを活性化したいという意味で「大阪・関西」にしています。
─万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」となっています。これは何をイメージしているのでしょうか。
小林 万博は、もともと科学技術を国力として見せていくことを目的としていて、そういう機能は今も残っていますが、目的そのものは徐々に変わってきていて、いわゆるSDGsのような社会課題の解決の手段を全世界で考えていく場にしようということになっています。そこで今回は、「いのち」に焦点を当てて考えていこうというのがテーマになっています。
特に、コロナ禍が終わった直後の大イベントですし、残念ながら戦争が世界中で起こっている中、世界中から人が集まってどうしたらいいのかを考えていく参加型のイベントを開催することは、非常に意義があると考えています。その中で、人間がどう生きていくのか、さまざまな生態系の中で「いのち」をどう育んでいくのか、いろいろな角度から考えて、人類の幸せにつなげていこうというものです。
─ご説明いただいたテーマの具現化に向けて、会場の設営や運営の面でどのような点に特に力を入れていますか。
小林 今回のテーマ事業は「シグネチャープロジェクト(いのちの輝きプロジェクト)」で、各界で活躍する8人がプロデューサーになり、「いのち」をテーマにそれぞれの切り口で八つのパビリオンを展開します。8人がメインプロデューサーを務めた万博はこれまでなく、概要はこれから明らかになっていきますが、これが一つの大きな目玉となっています。
脱炭素と資源循環の技術を会場内で実現し、展示する
─これまでの万博とは異なる、「大阪・関西万博」ならではの工夫や特徴をお聞かせください。
小林 参加型のプログラム「TEAM EXPO 2025」もその一つです。これは、テーマであるSDGsの達成に貢献するために、個人やグループ、企業、自治体、教育機関、NGOといった団体が主体となり、それぞれの理想の未来社会を共につくり上げていくことを目指す取り組みです。会期前からリアルやオンラインのイベントを行っており、参加者同士の連携や交流の機会も設けています。また、会期中は会場で、その活動を展示やプレゼンでPRします。 このような参加型プログラムは期間中だけでなく、それ以降も広がりを持って続いていってくれることを目指しています。
─万博会場ではSDGsや環境保護に向けた脱炭素化にも取り組むとのことですが、実際にどのようなことを行っていくのですか。
小林 脱炭素と資源循環の取り組みは「EXPO 2025グリーンビジョン」を策定していて、CO2をできるだけ出さず、出したものは回収して循環させるシステムを運営していきます。例えば、これからの水素が燃料として使われる社会を予想して、水素船を万博会場まで走らせる、会場内で発生する生ごみから生成したCO2ガスを利用してメタネーションを実施するといったことが挙げられます。 こうした技術は、来場者に見ていただくことも重要で、1970年の大阪万博では未来の技術として動く歩道や携帯電話などが展示されましたが、それが今では普通に使われています。それと同じように、脱炭素と資源循環の技術が未来社会では当たり前になるということも感じていただきたいと思っています。
全国の商工会議所に万博を使い倒してほしい
─次に、開催・運営に向け、関西の各商工会議所をはじめとする経済団体とは、どのような連携を行っていますか。
小林 関西はもちろん、全国各地の商工会議所さんには大変お世話になっています。例えば、万博の機運醸成への取り組みは何年も前から各地で行っていただいていて、今もそれが継続中です。また、前売りチケットの販売も協力していただいております。 今後、大阪ではまち全体で万博を盛り上げていく動きになっていくと思いますので、各地の商工会議所さんとどう連携していくかを、これからさらに取り組んでいきたいと考えています。
─大阪や関西とは離れた地域の商工会議所は、万博とどのように関わっていけるでしょうか。
小林 大阪から離れていてもできることはありますので、万博を使い倒していただきたいと思っています。開幕前に万博の状況について知りたいということであれば、万博協会がある高層ビルでご説明して、ビルの上階から夢洲の会場をご覧いただくこともできます。また、地域のイベントに公式キャラクターのミャクミャクを呼びたいということであれば、派遣することもできます。 開催期間中であれば、万博プラス観光として、関西のほかの地域にも行っていただく形もあります。例えば先ほど申し上げた「TEAM EXPO」の取り組みなどもあります。万博会場の展示では、今後のヒントや勉強になることがあると思います。また、1週間ごとにテーマを変えて、各地の自治体や中小企業、お祭りなどが参加するイベントがあるので、そこで地域をアピールすることが各地域の団体や企業の活性化につなげられると思います。
万博を通じて日本各地に観光客を誘客していく
─今回の万博にはさまざまなパビリオンが出展しますが、その中で注目される国や展示物がありましたらお教えください。
小林 例えばイタリア館では、史上初めてバチカンが同館に共同出展します。館内ではイタリアの芸術が展示され、屋上には庭園とイタリアンレストランがあります。 ドイツ館は、日本語の「わ」をテーマに循環型社会をどう見せていくかをお考えです。特に出展国が粋を極めた建物を建築するタイプAのパビリオンは大きな見どころだと思います。
─また、インバウンド客を含め、来場者を全国各地に誘客することも重要ですが、そのためにどのような取り組みを行っていますか。
小林 一つは観光ポータルサイトの「Expo2025 official Experiential Travel Guides」です。これは万博のテーマに関連した高付加価値の体験商品をサイトでご紹介するとともに、予約から決済までできるものです。 万博に来場する、特に訪日外国人は、各地域での体験に興味があるので、そういった人にダイレクトで情報を届けられます。そのため、各地域の自然との触れ合いや文化体験などを商品化して、サイトに登録してもらえたらと期待しています。
─最後に、「大阪・関西万博」を通して日本から世界に何を発信していくのかお聞かせください。
小林 さまざまな社会課題がある中、日本は高齢化が進み、国土も狭いので、環境のことをよく考えていかなくてはなりません。その点で日本は世界のトップランナーです。そういった社会課題に日本はしっかり対応できる力があることを示していく。そうすることで日本人も自信を持てる機会になればと思っています。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
所在地 : 大阪府大阪市住之江区南港北1-14-16 大阪府咲洲庁舎43階
HP : https://www.expo2025.or.jp/
※月刊石垣2024年4月号に掲載された記事です。
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