日本商工会議所は6月21日、「新たな局面を迎えるわが国の観光に関する要望~地域を支える産業として観光が発展するために~」を取りまとめた。要望では、観光立国の実現や持続可能な観光地域づくりに向けて、地域の観光戦略に位置付けられた産業界や事業者のプロジェクトを支援する施策の充実・強化、地域一体となって取り組む地域ブランドの形成・活用の取り組み支援、観光需要の分散化・平準化などを求めている。今後、要望内容の実現に向け、関係各方面に働きかける。
観光分野ではインバウンド需要が急速に回復し、その消費額は過去最高となっている。日本の少子化・人口減少トレンドは加速し、地方から大都市への人口流出も依然として歯止めがかからない中で交流人口がもたらす経済波及効果や地域への愛着の醸成などの観点から、地域社会・経済において観光が果たす役割はこれまで以上に重要となっている。
一方、インバウンド需要は従来から課題視されている三大都市圏への偏在がますます加速し、オーバーツーリズム対策や地方誘客が急務だが、深刻化する人手不足により、労働集約型ビジネスモデルでの成長はもはや限界を迎えている。こうした課題を乗り越えるためには、高付加価値化による観光消費の拡大とともに、観光から得た収益が地域に広く還元される地域経済循環の構築が重要となる。
こうした中、今回の要望は①地域経済の好循環を促す観光地域づくりの促進②地域に人と投資を呼び込む地域ブランディングの促進③観光産業の持続的発展に向けた環境整備の3点を柱としている。①については「地域の観光戦略に位置付けられた産業界・事業者のプロジェクトを支援する施策の充実・強化」「観光地域づくり法人(DMO)における戦略策定機能の強化」「観光地域づくりの中核を担う観光人材の確保・育成に向けた、地方大学などにおける高度観光人材育成プログラムの開発支援」「観光DXの推進を担うデジタル人材育成」などを要望している。
②については「地域一体となって取り組む地域ブランドの形成・活用の取り組み支援」「歴史的建造物の復元などによる、地域の愛着や誇りを喚起する地域のレガシー形成支援」「地域の産業界・企業の積極的な参画による、保存・活用を両輪とする文化観光の推進」「マンガ・アニメなどコンテンツの制作関連物の保全・活用を通じた観光誘客の取り組み支援」などを求めている。
③については「子どもの学び(ラーニング)と休暇(バケーション)を組み合わせた『ラーケーション』やMICE、ユニバーサルツーリズムなどを通じた観光需要の分散化・平準化」「入国手続きの迅速化やインフラ整備・広域交通の整備」などを挙げている。
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