オリンピックの年に行われる米国の大統領選挙の季節が再びやって来た。現職のバイデン大統領はトランプ前大統領との討論会後、世論の動向を見て民主党の候補者の地位をカマラ・ハリス副大統領に譲った▼
一方、トランプ氏は副大統領候補としてオハイオ州知事のJ・D・ヴァンス氏を指名し、ハリス氏はミネソタ州知事のティム・ウォルズ氏を指名した。両陣営ともスイングステート(揺れる洲)と呼ばれる北部の支持拡大を狙った▼
トランプ氏の政策は、連邦政府の大幅な再編を目指し、連邦職員の忠誠を確保するための人事刷新を行いそうだ。また、彼の「米国第一主義」はウクライナ支援からの撤退など米国の外交政策に大きな変化をもたらす可能性がある▼
一方、ハリス氏の政策は女性の権利、特に人工妊娠中絶の権利保護を中心とした政策を掲げ、黒人やヒスパニックなどのマイノリティー支援にも力を入れるとみられる。外交政策においてもバイデン政権の政策が踏襲され、大きな変化はなさそうだ▼
日本にとっては、トランプ氏が再び大統領に就任した場合、防衛費のGDP比率2%への引き上げ要求など日本の防衛政策にさらなる圧力がかかる可能性がある。一方、ハリス氏が勝利すれば、バイデン政権の政策が継続され、大きな変化はなさそうだ▼
米国の政治地図を見ると、農村部を中心とした中西部は保守的で共和党が強い。一方、ニューヨークやカリフォルニアなどの東西海岸はリベラル色が強く、民主党の支持基盤である。これらの州での支持動向は大きく変わることなく、大統領選挙の帰趨(きすう)はスイングステートでの争いにかかっている。9月10日の2人のテレビ討論会を見守りたい
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)
最新号を紙面で読める!