日本商工会議所は10月17日、東京商工会議所と共同で要望書「雇用・労働政策に関する要望」を取りまとめ、関係各方面に提出した。25日には、日商の伊藤一郎特別顧問・労働委員長が厚生労働省の稲津久副大臣を訪ね、要望書を手交した。要望書では、重点要望項目として、①「同一労働同一賃金」に関する支援策の強化・拡充、②下請け中小企業に対するしわ寄せ防止対策の強化・拡充、③企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大、④中小企業の実態を考慮した高齢者の就業機会の確保、⑤中小企業の実態を考慮した最低賃金の決定の5点を挙げている。(要望書概要3面に)
日商・東商の調査では、「人手不足」と回答した企業の割合は調査開始以来、一貫して増加し、2019年度調査では、66・4%に達している。また、今後「人手不足感が増す」と回答した企業は5割強を占めるなど、人手不足は深刻さを増すと予想される。
一方で、今年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」の認知度は向上しているものの、法施行後も多くの中小企業から「深刻な人手不足の中で、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化への対応は困難」「同一労働同一賃金の内容や定義が分かりづらく、グレーゾーンが広いことから、自信を持って準備を進めることができない」との声が続いている。このため要望書では、同一労働同一賃金への対応について、法のさらなる周知に加え、47都道府県に設置された「働き方改革推進支援センター」による丁寧かつきめ細かい相談支援、「キャリアアップ助成金」など支援策のさらなる周知と強化・拡充を求めている。
また、発注側企業が長時間労働の削減などの働き方改革を進める中で、下請け中小企業に対して、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更などのしわ寄せを生じさせることにより、下請け中小企業の業務負荷が増大し、働き方改革の妨げにつながっているとの声が多く聞かれている。このため要望書では、政府は今年6月に策定した「大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への『しわ寄せ』防止のための総合対策」にのっとり、大企業と下請け中小企業の間の取引関係の実態把握および取引条件の改善を図ることにより、下請け中小企業に対するしわ寄せ防止対策をより強力に推進するよう要請している。
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