経済産業省は8月30日、2025年度予算の概算要求・税制改正要望を発表した。このうち、中小企業対策費は1300億円を計上。25年度当初予算に比べて218億円を上積みしている。
基本的な課題認識と対応の方向性として、「厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者などに対する価格転嫁対策や資金繰り支援、省力化投資の支援などに万全を期すとともに、構造的賃上げの実現に向けた環境整備を図る」と強調。その上で、中小・小規模事業者の成長に向けた取り組みを支援するため、予算・税などの政策手段を総動員するとともに事業承継、社会課題解決などを通じて、地域経済の活性化を図る方針を示した。
中小企業庁は「令和7年度中小企業・小規模事業者・地域経済関係概算要求等ポイント」を発表。概算要求などのテーマを①物価高、人手不足などの厳 しい経営環境への対応②環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者などの成長支援③小規模事業者支援、社会課題解決をはじめとした地域における取り組みへの支援など④事業承継、再編などを通じた変革の推進⑤経営支援、伴走支援の推進――の5本柱で提示した。
①では、価格転嫁対策として「中小企業取引対策事業」に36億円(24年度当初予算28億円)を計上。「価格交渉促進月間」(9月・3月)や、下請Gメンなどによる取引実態の把握、下請法の厳正な執行、下請かけこみ寺での相談対応などを実施する。 資金繰り支援としては、中小企業活性化協議会による事業再生支援や事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引き継ぎ支援などを実施する「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」に216億円(同146億円)と23年度補正予算52億円を計上した。
省力化投資促進に向けては、23年度補正予算で計上した「中小企業省力化投資補助制度」により、カタログから選ぶような汎用(はんよう)製品導入 への簡易で即効性がある支援制度を新設する。
②では「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)」に142億円(同128億円)を計上。大学などと連携して行うものづくり基盤 技術や高度なサービスに関する研究開発などを支援する。
③では、62億円(同54億円)を計上した「小規模事業対策推進等事業」により、中小企業支援機関などを通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援する。また、23年度補正予算と予備費で計上した「なりわい補助金」や「グループ補助金」などにより、能登半島をはじめとする被災地域の速やかな復旧・復興支援を継続する。
④に向けては、事業承継税制の特例措置における役員就任要件の見直しなどの検討を行う。また、23年度補正予算に計上した「中小グループ化・事業再構築支援ファンド出資事業」では、独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資によりファンドを組成し、グループ化・事業再構築を通じた成長を目指す中小企業に対し、リスクマネーの供給やハンズオン支援を実施する。
⑤については、各都道府県によろず支援拠点を整備するなど、中小企業・小規模事業者が抱えるさまざまな経営課題に対応するための体制を整備する「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」に57億円(同35億円)を計上した。また、「中小企業実態委託調査費」に24億円(同22億円)を計上。売上高100億円以上への成長を目指す企業の経営者ネットワークの構築や、成長に向けた機運醸成を促進するための調査を実施するほか、人材活用ガイドラインなどの普及を通じて、副業・兼業人材、女性、高齢者など、多様な人材の戦略的な活用を促進する。
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