日本・東京商工会議所は11月21日、「年金制度改革に関する提言」を取りまとめ、公表した。提言では、深刻さを増す人手不足・人材不足が中小企業や地域経済の足かせとなる中、事業環境をめぐる諸制度において、労働者の就労抑制・時間調整の誘因を極力排除することが必要と指摘。社会保険料の負担も大きな課題であるとの基本認識の下、政府に中小企業の持続的発展に向けた成長戦略・施策の推進を求めるとともに、公的年金制度に焦点を当て、いかに、中小企業の経営実態に留意しつつ、社会の要請に応え得る形に再構築できるかという視点で、課題提起、提言を行っている。
提言は、わが国の公的年金制度が国民皆年金として整備され、老後の暮らしの収入基盤を支える極めて重要な役割を担う一方、社会保障全体を巡る課題として、社会保険料負担の増加が消費や企業経営に少なからぬ影響を与えていることを指摘。国として適切と考える社会保障水準の見極めと、それに対する保険料の在り方について、腰を据えて検討することを求めている。また、今重要なこととして、現役層・若者世代への年金制度の正しい理解の促進や、自分たちも相応の給付を受けられるという安心感の醸成を求めるとともに、旧来の国民の暮らし方に基づいた制度設計の不具合や不公平(感)の解消に向けた抜本的な見直しを要望している。
具体的には、①社会の変化に対応した年金制度への再構築②将来の公的年金の受給水準確保③私的年金(企業年金・個人年金)の普及④その他の検討課題 ――の4点を提示。社会環境・構造の変化や年金制度の課題認識を踏まえた制度の再構築に向けた提言を行っている。
①では、働ける環境にある人に能力に応じて働いてもらえる環境の整備とそれを阻害する制度的要因を是正する必要性を指摘。事業者の実情に配慮した被用者保険の適用拡大や、「年収の壁」問題の本質的な解決に向けた有効な対策の検討などを求めている。②については、現役世代の可処分所得を減少させず、将来の受給水準の確保を図ることが公的年金制度の改革の在り方として重要であるとの認識の下、「マクロ経済スライド」の着実な実施と同スライド機能を弱める名目下限措置の撤廃、基礎年金の保険料拠出期間の延長検討を求めた。
③では、老後への不安を和らげ、消費意欲を高めていくために、公的年金を補完する私的年金の役割が一層高まる一方、企業年金を実施する企業の割合が特に中小企業で低下していることから、企業年金の掛け金や事務の負担に対する支援や、iDeCo+の拡充(最低拠出額の引き下げなど)、普及支援の強化などを要望。④では、標準報酬月額制度の見直しや、個人事業主が厚生年金に加入できるよう検討を求めている。
最新号を紙面で読める!