日本商工会議所の小林健会頭は11月26日、首相官邸で行われた政労使会議に出席し、労務費など価格転嫁の推進を求めるとともに、最低賃金について、現場の実態を踏まえた引き上げスピードと上げ幅を議論する必要性を指摘した。会議には、日商の小林会頭のほか、使用者側から日本経済団体連合会の十倉雅和会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長、全国商工会連合会の森義久会長、労働者側からは連合の芳野友子会長、政府からは石破茂首相のほか、林芳正官房長官、武藤容治経済産業大臣ら主要閣僚が出席。2025年春季労使交渉と最低賃金の今後の中期的引き上げ方針について意見交換を行った。
小林会頭は、4月の日商調査で中小企業の賃上げ率が3・62%だったことに触れ、「中小企業も相当頑張っている。こうした動きが来年以降も持続して地方の小規模事業者、非正規雇用の人も含めた社会全体の底上げになることが必要だ」と述べた。一方、依然として賃上げ実施企業の6割が業績の伴わない「防衛的賃上げ」であると指摘。特に労務費の転嫁について、「まだまだ進んでいない」と述べ、粘り強い取り組みを政府に求めた。
最低賃金の引き上げについては、「影響を受ける中小企業の割合は年々高まっている」と指摘。従業員の解雇、新しい投資の抑制など、厳しい対応を迫られる会員の例を挙げ、「地方の生活や産業インフラを支える中小企業の支払い能力を超える引き上げが続けば、影響が広がり、ひいては地方経済の減退につながる」と強い懸念を表明した。
会議に出席した石破首相は、「デフレ脱却と成長型経済の実現を確実なものとし、地方経済と日本経済を共に成長させ、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現することを目指す」と述べ、来年の春季労使交渉において、ベースアップを念頭に、大幅な賃上げへの協力を依頼するとともに、中小企業、地方にも賃上げの流れが行き渡ることが重要との考えを表明。政府として、賃上げ環境整備のための具体策を盛り込んだ総合経済対策に基づき、価格転嫁など取引適正化の推進、人への投資の促進、中堅・中小企業の経営基盤の強化・成長の支援などに取り組んでいく方針を示した。
また、「労務費の価格転嫁の徹底に一層全力で取り組んでいく」との考えを表明し、厚生労働大臣に全国47都道府県における地方版政労使会議の開催を指示するとともに、最低賃金については、「官民挙げて、問題の深掘りや環境の整備を図っていく」と述べ、対応策を来春までに取りまとめるよう関係閣僚に指示した。
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