本州最北端にあるむつ市は雄大な自然が残る下北半島の中心に位置し、半島全体の生活の中心的な役割を担っています。海に囲まれたその地形から、古くは海運によってさまざまな地域との交流も行われ、海を通して運ばれてきた文化は、現在も四季折々に行われる祭りなどにその影響を見ることができます。一方、自衛隊の各基地や原子力関連施設など、国の根幹を成す施設の集積地という側面もあり、これまでさまざまな人々、文化、事業を深く理解し、柔軟に受け入れることで、独特な産業構造を組み上げてきた地域といえます。
わが国は現在、「人口減少」という大きな課題に直面していますが、その波は地方からやってきます。当市においては、2010年代まで「高等教育機関の空白地域」で、高校卒業後に専門的な学びを求める場合は、地元、親元を離れることが強いられてきました。しかし、コロナ禍の20年春、青森明の星短期大学下北キャンパスが遠隔授業システムを導入した授業をスタート。人口減少時代にデジタル技術の活用により新たな高等教育機関が設置されたことは、地域の子どもたちに希望をもたらしました。
当所ではこの出来事を、地域で活躍できる人材の育成を促進する好機と捉え、市をはじめ近隣の自治体・経済界から約50社の参画を得て「むつ下北未来創造協議会」を発足。これまで高等教育機関がなかった地域という「強み」を生かし、「本州最北端の下北」から、最先端の「THE SHIMOKITA」を創造するため、活動を展開しています。その成果もあり、今では地域の高等教育機関は3校に増加し、地区外からの進学者も出始めました。小さなまちの産官学連携の取り組みが、確実に広がりを見せています。
私自身も大学生をはじめ若者たちと直接対話する機会が増え、彼らの発想力や行動力にとても強い刺激をもらっている一人です。若者がまちの将来を握っているのだとしたら、彼らが魅力的に思う地域にすることがまちづくりの第一歩かもしれません。地域の経済界はそのことに向き合っていく必要があります。若者の力をもって、地域を時代に合わせて再構築することが今、求められています。
「田舎だから仕方ない、できない」ということはないのです。日本列島の中心から遠く、「端」にありながらも、新しい時代の「端」を発するむつ市でありたいと、そう思っております。