独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、英国のEU離脱の影響に関する調査結果の速報を発表した。調査の実施時期は、9月10日~10月8日。欧州に進出している日系企業842社から回答を得た。
英国のEU離脱によるこれまでの事業への影響は、欧州全体では「マイナスの影響」が前年調査から14・9ポイント増の31・0%に倍増した。「影響はない」の回答割合が53・1%と10・3ポイント減少した。国別に見ると、「マイナスの影響」は在英日系企業で54・0%と最も高く、前年調査の25・3%から28・7ポイント上昇した。在英日系製造企業に限定すると、この割合は70・8%に達した。
具体的な「マイナスの影響」としては、物流・税関の混乱などを想定した「在庫積み増しにかかる費用」が在英、在英を除く在EU日系企業双方から指摘された。在英日系企業からは「顧客に対する売り上げ減少」「取引相手のEU移転検討による設備投資控え」、在英除く在EU日系企業からは「英国の顧客に対する売り上げ減少」「規制上の対応コスト」などが挙げられた。
今後の事業への影響は、欧州全体では「マイナスの影響」が37・7%と、英国のEU離脱後を想定して、これまでの影響と比較し、さらに上昇する結果が示された。他方、「分からない」と回答する企業の割合が36・9%と4割弱を占め、引き続き先行きを見通すことができない状況が続いている。国別に見ると、「マイナスの影響」は在英日系企業で54・6%と引き続き最も高い結果となった。
具体的な「マイナスの影響」としては、在英、在英を除く在EU日系企業双方から「通関・物流の混乱」「関税コスト」「通関手続きの発生」「欧州・英国経済の混乱・停滞」が共通に指摘されたほか、在英日系企業からは「先行きの不透明感」「英国の経済停滞による消費低迷」「EUからの調達コスト上昇」などの回答が見られた。在英を除く在EU日系企業からは「英国単独市場となった場合の一部事業の取りやめの可能性」を指摘する回答もあった。
英国のEU離脱に備え、移転(一部移転を含む)などを実施した、もしくは、決定した拠点機能および調達先の変更については、「統括」(13社)機能が最大で、「販売」(7社)機能が続いた。調達先については5社が変更したと回答した。移転先としては「統括」機能では金融・保険を中心にドイツ8社、オランダ3社、ルクセンブルク2社、「販売」機能ではドイツ3社、オランダ、イタリア、チェコ、ポーランドなどが挙がった。調達先の変更については、英国からイタリア、スペイン、チェコなどEU内に変更する企業が4社、アジアから英国へ変更する企業が1社あった。
詳細は、https://www.jetro.go.jp/news/releases/2019/155066ac1f825b06.htmlを参照。
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