政府は5月14日、第34回新しい資本主義実現会議(議長・石破茂首相)を開催した。会議では、当日示された「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5カ年計画」の施策パッケージ案および資産運用立国、地方経済の高度化などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の小林健会頭は、価格転嫁について、トランプ関税への不安から従来のコストカット取引に戻り、取引先にしわ寄せが来ないよう、政府に監視機能の強化などを求めた。
小林会頭は、施策パッケージの中で12業種の「省力化投資促進プラン」が示されたことについて触れ、「商工会議所も関係機関などと連携して対応したい」と述べた。一方、政府には、3月に閣議決定された小規模企業振興基本計画(第Ⅲ期)に基づいた経営指導員の増員など、伴走支援体制の拡充を求めた。地域で活躍する人材の確保・育成については、「高い賃金水準や『やりがい』など、魅力的な仕事の創出と、アンコンシャスバイアスを解消し、寛容な地域社会の形成が必要」と指摘。また、「デジタルを活用した柔軟な働き方や、大企業のOBなど、専門人材を地域の中小企業につない でいく取り組みが重要」との見方を示した。
地方経済の高度化に向けては、観光産業や農林水産業を高付加価値型成長産業へと転換させる重要性を指摘。政府には、商工会議所を含め、地域の事業者を巻き込んだ観光地域づくりの推進支援を求めた。
石破首相は、「賃上げこそが成長戦略の要」と強調し、2029年度までに実質賃金上昇率を日本経済全体で1%程度に定着させる目標を表明。「生産性向上」「価格転嫁・取引適正化」「事業承継・M&A」「地域で活躍する人材の育成と処遇改善」――の4点に重点的に取り組んでいく考えを示すとともに、6月の実行計画取りまとめに向け、施策の具体化を関係閣僚に指示した。