日本商工会議所の小林健会頭は5月22日、首相官邸で行われた政労使会議に出席し、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5カ年計画」の施策パッケージについて、「地域の取引現場や事業者の声などが反映された」と評価し、迅速な施策の執行に期待を表明した。最低賃金については、「実態を踏まえない引き上げは、地方創生の実現に支障を生じかねない」と懸念を示した。会議には、小林会頭のほか、使用者側から日本経済団体連合会の十倉雅和会長(当時)、全国商工会連合会の森義久会長、全国中小企業団体中央会の森洋会長、労働者側からは連合の芳野友子会長、政府からは石破茂首相ら主要閣僚が出席。賃上げと投資の好循環実現に向け、意見交換を行った。
小林会頭は、「官公需取引の適切な推進は、地域中小企業などの所得改善に有効」と指摘。トランプ関税への対応については、「従来のコストダウン 取引慣行に戻り、下請事業者などにしわ寄せが来ないよう、政府の監視機能の一層の強化が必要」と主張した。
最低賃金については、「労働者の生活を保障するセーフティーネットであり、賃上げ実現の政策手段として用いるべきではない」との考えを改めて主 張。また、「物価や賃金の上昇が続く中、ある程度引き上げは必要」と前置きした上で、「問題は上げ幅とスピード。実態を踏まえない引き上げは地域経済に深刻な影響を与え、地方創生の実現に支障を生じかねない」と懸念を示した。政府には、法定3要素のデータに基づく議論を基本とし、中小・小規模事業者を含めた労使の意見を踏まえ検討することを強く求めた。
会議に出席した石破首相は、「賃上げこそが成長戦略の要」と述べ、2029年度までの5年間で、実質賃金上昇率1%程度を新たな水準の社会通念として定着させることを新たな目標として掲げるとともに、「中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備に政策資源を総動員する」との方針を表明した。
最低賃金については、官公需を含む適切な価格転嫁の徹底と業種別の「省力化投資促進プラン」に基づく支援体制の整備などを通じた中小企業・小規模事業者の生産性向上支援により、最賃の引き上げを後押しする方針を表明。「賃上げと投資の好循環の実現のため、世界経済を巡る見通しが不確実化していく中であっても、積極的な国内投資を促進するための施策を具体化していく」と意欲を示した。