日本・東京商工会議所は6月4日、「中小企業の賃金改定に関する調査」の結果を公表した。同調査は、雇用の7割を支える中小企業の賃上げの実態を詳細に把握し、今後の要望活動に生かしていくために実施。調査結果によると、25年度に賃上げを実施(予定を含む)する企業は69.6%で、昨年度調査(74.3%)に引き続き高水準を維持したものの、昨年度と比較すると4.7ポイント減少した。一方、価格転嫁の遅れや米国関税措置などで先行き不透明との声もあり、「現時点では未定」とする回答は23.5%で昨年に比べ3.1ポイント増加した。調査期間は4月14日~5月16日で、回答企業数は3042社だった。
2024年4月と25年4月の賃金を比較した正社員の「賃上げ額(月給)」は加重平均で1万1074円、賃上げ率は4.03%(昨年対比0.41ポイント増加)。従業員数20人以下の小規模企業では9568円、3.54%(昨年対比0.6ポイント増加)だった。
正社員で5%以上の賃上げを行った企業は、全体で30.3%と、昨年対比で5.6ポイント増加。小規模企業では27.0%で昨年対比3.5ポイントの増加とな、いずれも増加する結果となった。一方、「賃上げを実施していない(賃上げ率0%または賃下げ)企業」が全体の2割(20.2%)を占め、小規模企業では3割超(31.1%)と、依然二極化の傾向が続いていることが明らかになった。
地域別で見ると、都市部の正社員の賃上げ額(月給)は加重平均で1万2857円、賃上げ率は4.37%(昨年対比0.48ポイント増加)。地方では1万627円で、賃上げ率は3.94%(昨年対比0.41ポイント増加)となった。都市部、地方共に昨年以上の賃上げが進んでいるものの、賃上げ率では、0.4ポイント以上の差がある。また、地方の小規模企業の賃上げ率は3.55%で、さらに0.4ポイント近い差が生じており、「都市部と地方」「地方と地方の小規模」間での格差縮小に向けた支援の必要性が浮き彫りになる結果となった。 パート・アルバイトなどの「賃上げ額(時給)」は加重平均で46.5円、賃上げ率は4.21%となった。小規模企業では、37.4円、3.30%で、賃上げ率は昨年度と比べて0.58ポイント減少した。
パート・アルバイトなどで5%以上の賃上げを行った企業は全体で35.6%。小規模企業でも31.4%と共に3割を超えた。一方、全体の25.8%、小規模企業の36.8%が賃上げを見送ると回答しており、依然として二極化の傾向が続いている。
調査に回答した企業からは、「中小企業の多くは厳しい経営状況の中、精いっぱいの賃上げを実施している。賃上げの原資を確保するためには労務費を含めた価格転嫁交渉が必須。顧客に対しての値上げ交渉がもっとスムーズにいくような政府のサポートをお願いしたい」(運輸業)、「人材確保のため賃上げはせざるを得ないが、先行きが不透明な中でのベースアップには不安もあるため、正社員については一時金の増額で対応。米国関税の問題も今後、間接的に自社の事業にまで影響が及ぶのか不安を感じている」(製造業)といった声が寄せられた。
調査の詳細は、こちらを参照。