内閣府はこのほど、2025年度の経済財政白書「年次経済財政報告―内外のリスクを乗り越え、賃上げ起点とした成長型経済の実現へ―」を取りまとめ、公表した。白書では、わが国経済が、昨年度を上回る高い賃上げ率や過去最高を更新した設備投資など、これまでにない前向きな動きが見られる一方で、物価上昇の継続による消費マインドや実質賃金の下押し、米国トランプ政権による広範な関税措置の影響など、内外需の両面から困難に直面している現状を指摘。「日本経済はまさに成長型経済に移行できるかの分岐点にある」との認識の下、米国の関税措置による影響や今後の経済・物価 へのリスク、持続的な賃金上昇の実現に向けた課題などの視点から議論を展開している。
今年の白書は、「日本経済の動向と課題」「賃金上昇の持続性と個人消費の回復に向けて」「変化するグローバル経済とわが国企業部門の課題」の3章で構成。第1章では、米国による関税措置の影響について、「輸出企業に対する直接的な影響に加え、世界経済の下押しを通じて間接的にもわが国経済を下振れさせる大きなリスクとなっている点に留意が必要」との見方を強調。国内産業への影響を勘案し、資金繰り支援など必要な対策を万全に構じていくことにより、その影響を最小限に抑える重要性を指摘した。
第2章では、個人消費の回復が力強さを欠いている背景として、「恒常所得の増加に対する期待の乏しさ」「物価上昇が続くという予想が招く消費マインドの低下」「老後の生活をはじめとする将来への不安」の3点を指摘。政策的な観点として、「2%の安定的な物価上昇の早期実現」「実質賃金が継続的に上昇する環境の整備」「持続的な社会保障制度の確立」などが重要と主張した。
第3章では、近年の世界経済について、「国際協調が形骸化し、保護主義をはじめとする国際的な分断が進行する恐れがある」と懸念を表明。自由で公正な国際経済秩序を維持・強化し、自由貿易の下で持続的成長を目指す必要性を指摘した。また「経済安全保障やエネルギー安定供給などの観点から、過度に海外からの供給に依存しない体制の整備などが重要」との認識を強調した。さらに、これまで企業が国内ではなく海外での投資などを増やしてきた要因の一つとして、「国内投資によって得られる期待収益が低いと認識されてきた」ことを挙げ、「企業の資金が、より国内投資に回り、国内賃金の引き上げにつながるような環境づくりが重要」との考えを示した。