厚生労働省はこのほど、有識者らで構成される「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめ、公表した。同報告書は、人材開発政策の基本的方向について、①労働市場でのスキルなどの見える化の促進②個人のキャリア形成と能力開発支援の充実③企業の人材開発への支援の充実④人材開発機会の拡大、技能の振興――の四つの柱で整理するとともに、スキル向上の機会が少ない非正規雇用労働者や中高年労働者、キャリア形成の初期段階にある若者や現場人材育成に対する支援策などについてまとめた内容となっている。
①では、今後労働供給制約が強まる中、働く意欲を持つ労働者がそれぞれの事情に応じて働き方や職業を選択できる環境を整備することが重要」との認識を強調。そのために、「労働市場におけるスキルの標準化と見える化」や「企業の人材開発に関する情報の発信」を通じて、労働者自身が職業や職務の選択を適正かつ自律的に行える基盤を構築していくことが重要との見方を示した。
②では、「社会全体の活力を高めるには、個人が自立的に能力開発を進め、その能力を最大限に発揮することを可能にすることが望ましい」との認識の下、キャリア形成支援や能力開発支援に向けた環境整備の重要性を主張。具体的には、キャリアプランの形成、振り返り、状況に応じた見直しなど、労働者の取り組みを伴走型で支援していく必要性を指摘している。
③では、「企業の人材確保が難しくなる中、従業員のスキル向上と労働生産性の向上が一層重要になる」との認識の下、「人材確保の質を高める環境整 備」や「デジタル技術の活用による労働生産性の向上と能力の最大化」などに向けた支援を行っていくべきと主張した。
④では、AIなど技術の進展や、労働力需給の状況などを踏まえつつ、職業訓練機会の充実が図られることが重要との認識を強調。「人材開発機会の充実」「民間教育訓練機関が提供する訓練機会の充実と質の確保」などに向けた環境整備の必要性を指摘するとともに、2028年に愛知県で行われる「技能五輪国際大会」を契機に、中高生の段階から技能を尊重する機運の醸成などに向けた取り組みの強化を進めるべきとの認識を示した。
多様な労働者の人材開発策については、スキル向上の機会が少ない非正規雇用労働者や中高年労働者、キャリア形成にある若者などを包摂し、社会全体としてスキルの底上げを図っていくことが必要と主張。非正規雇用労働者における、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)を通じたオンライン訓練の全国展開に向けた検討や、現場人材のデジタル化に必要なスキルの学びを支援する方策の強化などの必要性を指摘した。