地方の衰退・人口減少が止まらない。そうした状況下で地域の特徴的なまち並みや地域企業の工場、ものづくりの技術などを活用し、新たな観光資源とすべく取り組んでいる地域がある。「何もないまち」などなく、地域に埋もれた素材をどう生かすか。あなたのまちでも今すぐ取り組める、四つのモデルケースを紹介する。
滞在型トレーラーハウス施設で地域活性化と防災の両立を目指す
長野市のカンバーランド・ジャパンは、トレーラーハウス(モービルホーム)の国内パイオニアとして、デザイン・設計・製造・販売までを一貫して行っている。同社が隣の須坂市で運営する「須坂健康の森RVリゾート」は、移動可能で柔軟性の高い居住・宿泊施設であるトレーラーハウスの特性を活用しており、地域に観光客を呼び込み、まちを元気にする取り組みとして期待されている。
自社のトレーラーハウスを被災地に仮設住宅として提供
トレーラーハウスは下に車輪が付いており、車両でけん引して移動できる居住・宿泊用ユニットのこと。設置場所や用途を柔軟に変えられるのが特徴で、キャンピングカーよりも大きいため居住性が高く、長期滞在にも適している。カンバーランド・ジャパンは、代表取締役の原田英世さんが1991年に米国からトレーラーハウスの輸入販売を開始し、95年に法人化した会社である。トレーラーハウスの取り扱いを始めた経緯について、原田さんはこう説明する。
「私が以前、外車の輸入販売をしていた頃に、米国でトレーラーハウスに出会って輸入販売を始め、3年後に事業化しました。会社が登記されたのが1995年1月18日で、阪神・淡路大震災の翌日。それから10日後に連絡が来るようになり、その時に初めてトレーラーハウスが被災地で使えることを知りました。人助けになるし、今後の災害にも対応できるトレーラーハウスを日本に紹介できる良いチャンスだと思い、積極的に対応を進めていきました」
98年に地元で開催された長野冬季オリンピックの際には、長野駅の隣接地に開設されたオリンピックプラザに設置する飲食店舗として、米国から輸入した10台を納入した。トレーラーハウスは、コンクリートの基礎が不要で建築廃材も出さないため環境に優しく、「自然との共存」という同オリンピックのテーマにもマッチすることから採用されたものだった。
「トレーラーハウスは、飲食店舗として使われたのですが、保健所の営業許可や消防法の基準があり、それらを満たすための大改装が必要でした。そのコストが無駄だと感じ、容易に対応できるものを自分たちでつくれないかという思いから、トレーラーハウスの自社開発を始めました」
地方創生と防災備蓄のため宿泊施設をオープン
トレーラーハウスは、車両のため軽量化が求められるが、仮設住宅として使うには建築基準法、店舗利用には耐火構造といった基準を満たす必要がある。こうした課題を乗り越え、日本仕様のトレーラーハウスをつくり上げていった。
「2007年の新潟県中越沖地震で、初めて日本製トレーラーハウスを被災地にお届けしました。一日も早くまちを明るくしたいという現地からの要請で、現地でトレーラーハウスの中に厨房(ちゅうぼう)設備を入れ、飲食店街にしたのです。米国では災害時のトレーラーハウスの活用が体系化されており、日本でもその必要性を痛感しました」
