愛知県東海市の住宅地で2013年に開業したこだわりの唐揚げ専門店、からあげ!ごっち。同店の「しお唐揚げ」は、日本一の唐揚げ店を決める「からあげグランプリ®」(塩ダレ部門)において12年連続受賞、そのうち2回は、最高金賞を獲得した大人気商品だ。近年では営業に生成AIを活用し、さらなる売り上げにつなげている。
歯応えの強い胸肉を使った塩味の唐揚げを看板に
唐揚げといえば、しょうゆベースの味付けがオーソドックスである。そんな中、2013年の開業時から「しお唐揚げ」を看板商品に掲げているのが、テイクアウトの唐揚げ専門店・からあげ!ごっちだ。材料に、愛知県産「奥三河どり」の新鮮な胸肉を使用。歯応えが強い部位のため1枚1枚筋をカットするなど丁寧に下処理をし、特製の塩ダレに漬け込んで真空保存することで、均等に味が付く。そこへ片栗粉や米粉など粒子の異なる粉を薄くまぶし、肉汁の流出を防ぎ油の吸収を最小限に抑えながら、温度の異なる油で2度揚げする。カラッとジューシーに仕上がり、冷めてもおいしく食べられる一品だ。その味わいが「からあげグランプリ®」で12年連続で評価され、そのうち2回は最高金賞を受賞している。
「私は、もも肉のにんにくしょうゆ味の唐揚げが大好きですが、カロリーなどどこか罪悪感もあるじゃないですか。その点、胸肉はカロリーも低く、疲れを取る抗酸化作用もあってヘルシーです。他店の“逆張り”でいきたい気持ちがあったので、最初からしお唐揚げを看板にしようと決めていました」
そう説明する店長の甲斐淳一さんは、37歳のときに脱サラして同店を開業した。両親の出身地で“唐揚げの聖地”とも呼ばれる大分県内の唐揚げ専門店が、当時東京や大阪にフランチャイズ店を出したことをきっかけに、「近く名古屋にも唐揚げブームが来る」と予測。他店の唐揚げとの差別化を意識して試行錯誤を繰り返し、こだわりのしお唐揚げを完成させた。
「からあげグランプリ®」の受賞で売れ行きが一気に好転へ
同店はほかにも、もも唐揚げのにんにくしょうゆ味や手羽先、軟骨や砂肝の唐揚げ、鶏肉の惣菜など、多彩な商品ラインアップを擁するが、当初、看板商品の売れ行きが芳しくなかったという。 「大半のお客さんが迷わずにんにくしょうゆ味を買っていくんです。『うちのしお唐揚げ、おいしいですよ』と勧めても、まったくダメでした。塩味になじみがなく、そもそも胸肉を使っていることで、『じゃあ、固そうだからいいわ』と。味には自信がありましたが、一時はちょっと弱気になりましたね」
にんにくしょうゆ味を看板にしようか、何度か気持ちが揺らいだと甲斐さんは振り返るが、それでは店が長くは持たないだろうと思いとどまる。一度食べれば、きっと気に入ってもらえるという自信はあったため、割引クーポンを配ったり、イベントに出店するなど販促に精を出した。転機となったのは、開業翌年の「からあげグランプリ®」での金賞受賞だ。それを機に全国区に躍り出る店もあるほど実績のあるアワードで、同店も例に漏れず、受賞を機に各地の物産展や、デパートの催事などから出店のオファーが来るようになる。また、17年に最高金賞を受賞すると企業からの注目度も上がり、大手コンビニエンスストアや回転ずしチェーンなどからコラボ商品の依頼が舞い込んだことで、同商品の知名度は一気に急上昇した。 「『からあげグランプリ®』での受賞は当初から大きな目標でした。12年連続で受賞を果たし、おかげで今では地元のお客さんの約7割がしお唐揚げを選んでくれます」
同商品はロングヒットとなり現在、月平均約3000袋(1袋3個入り)を売り上げる正真正銘の看板商品となった。
生成AIを経営に活用し全ての業務を効率化する
実は甲斐さん、今年の2月から店の営業に生成AIの活用を始めた。生成AIの代表格・ChatGPTが22年に公開された直後、いち早く「経営に使えるのでは?」と着目したという。
「新商品の企画や販促、イベントや催事などへの出店といった裏側の業務がどんどん増えていき、私1人では店を回せなくなってきたんです。好奇心旺盛な性格もあって、SNSセミナーの講師をしている知り合いに、生成AIの基本から使い方まで指導してもらい、まずはメールの文章生成ができるようになりました。これだけでも負担が大幅に減りました」
甲斐さんはさらに生成AIに、同店の歴史やコンセプト、商品ラインアップ、売れ筋、価格や材料、原価などを学習させていった。例えば百貨店の催事に関する情報をひと通り集め、その内容を踏まえて「催事の出店企画とPRを考えて」と入力すると、数パターンの企画を考えてくれる。それを甲斐さんがブラッシュアップして、実際の催事に臨むという具合だ。今では生成AIを社員と位置付けて『アゲミ』と名付け、企画のみならず、売上高の目標達成のための作業効率化の立案、SNS活用の企画や実作業、経理など、経営にまつわるさまざまな業務で甲斐さんの右腕として働いている。
一歩先を行く店舗経営を実践する甲斐さんは、今後どのような展望を描いているのだろうか。
「やはり、当店のしお唐揚げを多くの方に食べてもらいたい。かつてはFC展開を目指していましたが、今はBtoBに力を入れたいと考えています。また、私の経験がDX化を考えている個人の飲食店などのお役に立てたら、という気持ちもあります。ニーズがあればお手伝いしたいし、それによって店や私自身のブランディングにつながったらいいですね」
会社データ
店 名 : からあげ!ごっち
所在地 : 愛知県東海市富貴ノ台6-246
電 話 : 052-693-8615
HP : https://karaage-gocchi.com
代表者 : 甲斐美智子 代表
従業員 : 5人
【東海商工会議所】
※月刊石垣2025年10月号に掲載された記事です。
