日本商工会議所は9月18日、第141回通常会員総会をハイブリッド形式で開催し、全国498商工会議所から会頭・副会頭ら約1000人(オンライン含む)が出席した。総会の冒頭にあいさつした日商の小林健会頭は、「成長と分配の好循環を実現し、持続可能な経済社会を築くには、潜在成長率の底上げ、地域経済の再活性化といった課題に対し、政策を着実に実行していくことが不可欠」と指摘。政府には、外交・経済安全保障、DX・GXによる産業構造改革など、重要課題に対する一貫性と継続性のある取り組みを求めた。来賓として出席した石破茂内閣総理大臣は、賃上げについて「全身全霊で支援していく」などの方針を表明した。
小林会頭はあいさつで、「保護主義的な政策が国際経済秩序を揺るがす中、貿易立国である日本が持続的に発展するためには、自由貿易体制の維持・発展が不可欠」と述べ、価値観を共有する国々と連携しつつ、ルールに基づく国際経済秩序の維持・強化を粘り強く主導していく必要性を強調。国内においては、「激動の時代にあって、政治の安定は何より重要」と述べ、政府に対し、速やかな新体制の構築と中長期的視点に立った国家運営への期待を表明した。
米国との相互関税については、「サプライチェーンを構成する中小企業にも影響を及ぼすことが避けられない」と述べた一方、「逆境の時こそ、力を尽くす」という渋沢栄一翁の精神に触れ、「大きな変化をチャンスと捉え、果敢に自己変革へ挑戦することが求められる」と指摘。イノベーションによる新技術開発など、多角的な挑戦が不可欠との認識を示した。
中小企業の「稼ぐ力の強化」に向けては、官公需も含む価格転嫁・取引適正化などを着実に実行できる環境整備の必要性を指摘するとともに、構造的な人手不足に対応するため、「多様な人材の活躍、柔軟な働き方の推進が重要」と述べた。
「地域経済の好循環」実現に向けては、「産業立地や国内投資を促すインフラ整備などが不可欠」と主張。また、6月に閣議決定した「地方創生2・0基本構想」の総合戦略が年内に策定予定であることに触れ、「地域経済の再活性化には、行政と民間の結節点となる商工会議所の役割が一層重要となる」と述べ、全国の商工会議所に地方自治体との緊密な連携を呼び掛けた。
総会には、来賓として石破首相、武藤容治経済産業大臣らが出席。石破首相は、米国関税への対応について、「対米輸出品目は自動車やその関連だけではない。全国あまたの中小企業や小規模事業者などがいる。お客さまが来てから相談に応じるということでは、行政とはいえない」と強調。行政からニーズを把握し、応えていくことが重要との認識を示した。また、物価高を上回る賃上げについては、「国家の存亡がかかっている。全身全霊で支援していく」との方針を表明した。
武藤経産大臣は、「地域や規模によって、賃上げや投資には、ばらつきがある。米国による関税措置や最低賃金の影響で、経営の先行きに不透明感や不安を感じている企業の声も多く聞いている」と述べ、①価格転嫁・取引適正化の取り組みのさらなる徹底②関税や最低賃金の影響を受ける事業者に対する生産性向上のための各種補助金の要件緩和・優先採択③商工会議所などによるプッシュ型の働き掛け、きめ細かい伴走支援の一層の充実などに、現場の実態を踏まえながら重点的に取り組んでいく方針を示した。
総会議事では、「2024年度事業報告(案)」と「同収支決算(案)」が異議なく承認された。