古来、日本人は夜のホタルの点滅に特別の思いを寄せ、古今和歌集など多くの文学作品にホタルの詩歌が詠まれてきた▼
ホタルの点滅の仕方では、オスとメスで点滅の仕方が違うほか、地域によっても方言のように違いがある。ヘイケホタルのオスはピカピカ光り、発光物質をばらまくこともある。一方、メスはゆっくり光る。そして面白いのは、メスはオスと交尾後は、オスと同じようにピカピカ光る。私はもう交尾をする必要がありませんとアピールしているようだ。沖縄県の八重山エリアに春から初夏にかけて見られるヤエヤマヒメボタルはオスが光って飛び回るが、メスは地面にいてゆっくり光っている▼
ホタルの生息域についても地域特性があることが面白い。例えば、ゲンジボタルでいえば、山口県など西日本にいるゲンジボタルは2秒に1回点滅するが、青森県など東日本のそれは4秒に1回点滅する。ちょうどフォッサマグナ(地質学において東西日本の構造を分ける境界)が西のホタルと東のホタルを分ける境界となっている。その境界にある東京・あきる野市では点滅が2秒に1回と4秒に1回のホタルが混在しており、3秒に1回のホタルもいる。また、100万年前に九州から離れた五島列島のホタルは1秒に1回点滅する独自の発達をした▼
ホタルの発光現象は、ホタルの体内で行われる化学反応によって起こる。具体的にはホタルの腹部にあるルシフェリンとルシフェラーゼという2種類の化学物質を酸素によって反応させて光を出している▼
このホタルの生息域が地質学において、東日本と西日本と分けるフォッサマグナの存在を示唆し、日本列島の成立に関して傍証を与えていることは興味深い
(政治経済社会研究所代表・中山文麿)