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「下町育ちの再建王」の経営指南 苦手な仕事、不遇な時代が自分を伸ばす

私は元来人見知りで、初対面の人と話をするのは若い頃から苦手でした。

大学一年生のとき、恋焦がれてやっと告白した初恋の相手とも、口下手が原因でお付き合いを中断したほどです。会っていると天にも昇るような気分なのですが、冷静になってその日のデートを思い返すと、ろくに口も利けず、気の利いた言葉の一つも言えていませんでした。自分に落胆して、その後、その人と会うのをやめました。

しかし、船井総研では、そんな逃げ腰は許されませんでした。上司が講演するセミナーをいくら手伝っても自分の成績にはならず、自分のセミナーを開催しないと成績が上がらない仕組みだったからです。

入社して半年たったとき、上司から1時間30分の講演を命じられ、腹をくくって3時間分の内容を準備して挑んだのですが、早口でまくしたててしまい、1時間15分で終わってしまいました。残りの15分をどうやって埋めたかは憶えていませんが、このときの緊張は今でも時々思い出されます。

幸いにも、その次の講演で、尊敬する上司から「小山君、講演うまいじゃないか」と褒められたことをきっかけに、講演への恐怖心は徐々に消えていきました。ただ、今でも毎月30ページ前後のテキストをつくり、話のネタ仕込みを念入りに行う習慣は、最初の講演のときのことがトラウマになっているからなのかもしれません。

初対面の方への緊張は今も変わっておらず、楽しく盛り上がって話をしていても、その後一人になると、ソファにへたり込んでしまいます。しかし、どれほど苦手でも、初恋のときのように逃げるわけにはいきません。

苦手だと思うことを克服するための、私なりの方法があります。苦手であるからこそ、抜かりなく準備を重ねる。そして自我を消し、イメージを持って、プロの顏でその通りに演じ切るのです。回を重ねれば必ずレベルの高い仕事ができるようになり、周囲に認められるようになります。苦手な仕事も、不遇な時代も、捉え方によっては、自分を大きく成長させるチャンスなのかもしれません。逆境を自分の力に変えてください。

野球のイチロー選手は、アスレチックスにティム・ハドソンという苦手なピッチャーがいました。あるインタビューで、「ハドソン選手に対してどう思いますか?」と尋ねられたとき、「彼は私の新たな能力を引き出してくれる、素晴らしいピッチャーです」と答えました。ハドソン選手の球を打とうと努力するからこそ、自分は成長できるんだ、とイチロー選手は考えていたのです。

私たちも、こういう発想で成長していきたいものです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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