流通・小売業界を取り巻く環境は、少子高齢化、ライフスタイルの変化、電子商取引の急速な進展などにより変化が著しい。こうした変化に的確に対応する知識を身に付ける方法として注目されているのが、販売士資格である。特集では、「リテールマーケティング(販売士)検定試験」とその合格者に付与される販売士資格の活用事例について、日本販売士協会の特別寄稿を紹介する。
流通・小売分野で唯一の公的資格「リテールマーケティング(販売士)検定試験」
「リテールマーケティング(販売士)検定試験」は、1973年から、経済産業省・中小企業庁の後援の下、日本商工会議所・各地商工会議所ならびに全国商工会連合会・都道府県商工会連合会の主催で実施しており、40年以上の実績を誇る。同検定試験の合格者に与えられるのが、流通・小売業界で唯一の公的資格である「販売士」の称号。資格登録者数は、全国で19万人に上る。
同検定試験の学習により、現場で役立つ販売・接客の技術だけでなく、在庫管理からマーケティング、労務・経営管理に至る幅広い知識が身に付く。
企業や教育機関などからの評価も高く、昇進・昇格の条件にしている企業も少なくない。また、資格取得により、転職や就職の際のアピールポイントとしても有効である。
試験科目の概要
試験科目は、「小売業の類型」「マーチャンダイジング」「ストアオペレーション」「マーケティング」「販売・経営管理」の5科目で構成。レベルは、1~3級の3段階に分かれており、どの級からでも受験できる。学歴・年齢・国籍問わず受験が可能。
3級は、売り場の販売員レベル。マーケティングの基本的な考え方や販売担当として最も重要な接客マナー、販売技術などに関する知識が身に付く。
例えば、図Aのコンビニエンスストアのフロアレイアウトは「小売業の類型」、図Bの見やすさと触れやすさの範囲は「ストアオペレーション」での学習内容となっている。
2級は、売り場の管理者レベル。店舗管理に不可欠な従業員の育成や指導、仕入れや在庫管理といった知識が身に付く。
1級は、店長や経営者レベル。トップマネジメント全般に関する商品計画や商品予算の策定、マーケティング政策の立案、人事・労務・財務管理といった知識が身に付く。
試験日程・学習方法
同試験は、7月と翌年2月の年2回施行。今年度は7月14日に2級と3級を施行(いずれも受験申し込みは終了済)した後、来年2月20日に1~3級を施行する。
また、同試験の最新情報を掲載している「商工会議所検定ホームページ」内の販売士検定ページ(https://www.kentei.ne.jp/retailsales)では、試験科目・時間、合格基準、受験料、受験申し込み方法、学習方法(①ハンドブックによる独学(1~3級)、②指定通信教育講座の受講(1~3級)、③養成講習会の受講(2~3級))などを紹介している。
5年ごとに知識をブラッシュアップ
販売士資格は、激動する流通・小売業界の変化や最新状況を捉え、引き続き第一線で活躍するため、資格更新制度に基づき、5年ごとに資格更新講習会や同通信教育講座の受講で知識のブラッシュアップを図っている。
一般社団法人日本販売士協会
1976年10月に、販売士の資質向上・社会的地位の確立を目的に設立。事業は“販売士のいる優良店”表示登録制度、「2級・3級販売士養成講座」「1級・2級・3級販売士資格更新講座」(当協会だけが実施する唯一の通信教育講座)、各種研修・セミナーなどを実施している。
<ホームページ>
さまざまな企業が販売士資格を活用
(日本販売士協会ホームページから転載)
事例1
販売現場での人材育成に活用
合名会社明石屋菓子店(鹿児島県鹿児島市・和菓子製造販売)
従業員数:約200人
資本金:1000万円
同社は、鹿児島の代表銘菓“軽羹(かるかん)”の製造販売を行っている。同社の新入社員は、店舗に配属されると、OJTで実務を学ぶが、並行して販売士3級資格の取得に向けて自主的に学習し、知識を習得する。
販売士は、プロの販売員として身に付けるべき基本的な事項が網羅されている。例えば、包装の際の“のし紙”の表書きなどの知識、陳列に関する用語や知識が役に立っている。
合格者には、受験料相当額の支給に加え、役員から「販売士認定証」を授与され、称賛と励ましの言葉を掛けてもらうことにより、モチベーションの向上が図られている。
事例2
卸売業がリテールサポート
(小売店支援活動のための知識修得に活用)
株式会社エトワール海渡(東京都中央区・卸売業)
従業員数:約650人
資本金:1億5000万円
同社は、生活関連商品の“総合卸商社”。衣・食・住に関わる商材を扱う。具体的には、アパレル・インテリア・雑貨・食品など、多くの商品を取り扱っており、全国約2万店の小売店が顧客である。その小売店が何を必要としているのかをよく理解し、役に立つ情報を提供する点が、卸売業としての存在価値であると認識している。
新入社員は、1年目に営業部に配属され、さまざまな売り場を経験する。同社は、入社2年目での販売士2級資格の取得を奨励している。受験に向けて通信教育講座を修了すると受講料の半額が支給される。また、合格者には、表彰式で社長から祝い金が授与され、合格後は、毎月、資格手当が支給される。
こうした企業や教育機関による販売士資格の活用事例は、日本販売士協会ホームページ(https://www.hanbaihan.com/)の中で多数紹介している。
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