小企業庁は「繁忙期対応」や「短納期対応」など長時間労働につながる商慣行の実態把握を目的とする「長時間労働に繋がる商慣行に関するWEB調査」の結果を、このほど発表した。同調査は、全国の中小企業7642社(民間調査会社が保有するモニター企業より選定)を対象に、2018年12月3~13日に実施され、全体の33・2%に当たる537社から回答を得た。特集では同調査の結果概要を紹介する。
1.繁忙期/短納期受注の発生状況
〇繁忙期は約7割の企業で発生しており、その要因は、「季節的な要因」が50・5%と最も高い。
〇短納期受注は直近1年間で6割の企業で発生しており、その要因は「取引先からの要望」で8割超となっている。
〇繁忙期はサービス業、小売業で、短納期受注は製造業で発生割合が高い。(図1)
〇繁忙期の発生状況を地域別で見ると、北海道、北陸、四国のエリアで「発生している」割合が8割超。業種別では、建設業、食料品製造業、紙・紙加工品産業、印刷産業、トラック運送業・倉庫業で8割超となっている。
〇直近1年間における短納期受注発生状況を地域別に見ると、北陸では発生割合が7割を超え、他のエリアと比較して高い。また業種別では、紙・紙加工品産業、印刷産業、半導体・半導体製造装置産業、電気・情報通信機器産業で8割超となっている。(図2)
〇繁忙期が発生する要因を地域別に見ると、北海道では「季節的な要因」、北陸では「取引先の繁忙期に対応するため」が他のエリアと比較して高い。
〇短納期受注が発生する要因を地域別に見ると、どのエリアにおいても「取引先からの要望」とする回答割合が最も高い。特に近畿では「自社の強み」として短納期を実施している企業の割合が24・2%と他のエリアと比較して高く8割超となっている。
〇繁忙期が発生する要因を業種別に見ると、情報サービス産業、技術サービス産業、建設業など、公共事業と関連する産業においては、「決算、年度末対応のため」と回答した割合が高い。素形材産業は「取引先の繁忙期に対応」、食料品製造業は「季節的な要因」が他の業種と比較して高い。
〇短納期受注が発生する要因を業種別に見ると、石油・化学産業、機械製造業、広告業では、「取引先からの要望」が9割超となっており、鉄鋼業、半導体・半導体製造装置産業では「自社の強みとして短納期を実施しているため」が3割超となっている。(図3)
〇公共事業と関連する産業である情報サービス産業、技術サービス産業、建設業などでは、繁忙期の発生要因が「決算、年度末対応のため」と回答した割合が高い。
〇情報サービス産業、建設業では短納期の発生要因について「決算、年度末対応のため」と回答した割合が高く、また印刷産業、トラック運送業・倉庫業、小売業といった短納期の主要取引先が行政や建設業など公共事業と関連する産業においても「決算、年度末対応のため」が要因である割合が高い。
〇製造業の生産活動を支える産業素形材産業、電気・情報通信機器産業、トラック運送業・倉庫業、機械製造業、鉄鋼業などにおける繁忙期の発生要因は「取引先の繁忙期に対応するため」と回答した割合が高い。
〇短納期の発生要因が「取引先からの要望」と回答した割合は、広告業で100%となったほか、石油・化学産業や機械製造業や技術サービス産業など、製造業の生産活動を支える産業や公共事業と関連する産業で高い傾向が見られる。
〇消費者に身近な産業である食料品製造業、小売業、繊維産業などにおいては、繁忙期や短納期受注の発生要因が「季節的な要因」と回答した割合が高い。
〇こうした業種との取引が多い印刷産業、トラック運送業・倉庫業、紙・紙加工品産業では、繁忙期や短納期受注の発生要因が「季節的な要因」と回答した割合が高くなっている。(図4)
2.繁忙期短納期受注対応時における従業員の平均残業時間の増加
〇繁忙期における従業員の平均残業時間は、8割超の企業が「増加する」と回答。繁忙期における1カ月当たりの平均残業時間が「45時間超」と回答した企業の割合は44・6%となった。
〇短納期受注に伴う従業員の平均残業時間は、6割超の企業が「増加する」と回答。短納期受注における1カ月当たりの平均残業時間が「45時間超」と回答した企業の割合は45%となった。
〇繁忙期における従業員の平均残業時間の増減を業種別で見ると、鉄鋼業、機械製造業、自動車産業、トラック運送業・倉庫業、技術サービス産業で9割以上が「増加する」と回答した。
〇短納期受注における従業員の平均残業時間の増減を業種別で見ると、建設業、機械製造業、トラック運送業・倉庫業で9割以上が「増加する」と回答した。
〇繁忙期における1カ月当たりの平均残業時間を業種別で見ると、建設業、印刷産業、素形材産業、機械製造業、トラック運送業・倉庫業、広告業、技術サービス産業では「45時間超」と回答した企業の割合が5割超となり、特に、素形材産業、トラック運送業・倉庫業では7割超となった。
〇短納期受注に伴う従業員の平均残業時間を業種別で見ると、繊維産業、素形材産業、機械製造業、自動車産業、トラック運送業・倉庫業、その他サービス業で「45時間超」と回答した企業の割合が5割超となり、特にトラック運送業・倉庫業では8割を超えた。(図5)
3.繁忙期/短納期受注の主要取引先
〇繁忙期の主要取引先は、小売業、建設業、卸売業と回答した企業が1割超。
〇短納期受注の主要取引先は、建設業、小売業、産業機械産業、自動車産業、電気・情報通信機器産業、卸売業と回答した企業の割合が1割を超えた。
〇繁忙期・短納期受注の主要取引先として最も回答が多い業種は、大半の業種で同業種であるとする回答が多い。一方、食料品製造業、紙・紙加工品産業、素形材産業、技術サービス産業、卸売業では、他業種を主要取引先とした回答が最も多い。
4.上昇コストの負担状況
〇繁忙期の労務時間増加に伴う人件費などのコスト上昇分の負担について、自社で負担しているという企業割合は99%に達しており、発注元が21%、外注先が17%の順位になっている。
〇短納期受注においても、同様の傾向が見られ、同コストの負担状況については、自社負担の割合が99%、発注元27%、外注先20%となっている。
5.繁忙期が売り上げに占める割合
〇全体の売上高に対する繁忙期の売上高が占める割合は、6割超の企業が25%未満。25%の企業が25~50%未満となっている。
〇業種別で見ると、全業種平均では繁忙期の売り上げ割合が50%以上と回答した企業の割合は11%であるが、繊維産業、素形材産業では3割超で、次いで技術サービス産業が25%、建設業が22・6%となっている。
6.短納期発注による費用の適切な負担を伴わない受注の増減
〇短納期発注の増加費用について、適切な負担を伴わない受注が増えていると回答した企業の割合は5%となっている。一方、減少していると回答した企業の割合は17・9%。
〇地域別では、東北で適切な負担を伴わない受注が増えていると回答した企業の割合は1割を超えている。
〇業種別では、建設業、繊維産業、紙・紙加工品産業、技術サービス産業で「増加している」企業の割合が1割を超えた。繊維産業、紙・紙加工品産業では、〝増加〟が〝減少〟を上回った。(図6)
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