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イノベーション生む企業文化・風土の醸成を IPA IT人材白書2019の概要(抜粋) 流動性高まるIT人材 デジタル変革をけん引

図1 ユーザー企業のデジタル化への取り組み状況無回答を除く)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はこのほど、IT人材白書2019を取りまとめ公表した。白書はIT人材を取り巻く環境や動向などを、IT企業、ユーザー企業それぞれの視点で取り上げている。今回は、IT企業とユーザー企業との間でIT人材の流動性が高まっていることに注目。両者とも今後の事業展開には、優秀な人材の獲得・確保が一層重要になると指摘しており、そのIT人材にはIT能力・技術のほか、ビジネス企画力(事業デザイン力、マーケティング力など)を身に付けることを求めている。特集では、白書の概要を抜粋して紹介する。

1.IT人材の流動性

(ユーザー企業)

〇2018年度調査(今回の調査)と13年度調査の比較によって、IT企業からユーザー企業への人材流動化が進んでいることが明らかになった。

〇IT人材を中途採用したユーザー企業に「中途採用したIT人材の直前の勤務先業種として最も多いもの」を尋ねたところ、18年度と13年度の調査結果を比較すると、直前の勤務先がIT企業である割合が最も多く、13年度調査の51・5%から18年度調査の59・6%と、8・1ポイント上昇した。

〇IT人材の流動化が進む中、「就職・転職の応募の増減」状況から、就職・転職の応募が増えたユーザー企業は、「人材の再配置や中途採用を積極的に実施」「IT人材を採用する上で強みとなる自社の文化や風土、魅力」を持っていることが明らかになった。

〇IT人材の流動性の動向を捉えるため、ユーザー企業のIT部門への就職・転職の応募状況を尋ねたところ、「IT部門配属を前提とした採用はしていない」企業の割合が52・3%と最も高くなっている。「2~3年前より応募が減った」企業の割合が若干高くなっているが、IT企業と比較すると、ユーザー企業のIT部門への応募状況の変化は少ない。

〇ユーザー企業が過去1年間にIT人材を獲得・確保した方法を尋ねたところ、「他部門からの異動」と回答した企業で「2~3年前より応募が増えた」が「2~3年前より応募が減った」よりも25・7ポイント、「中途採用(キャリア採用)」も24・3ポイント高く、自社内での人材の異動や中途採用を積極的に実施している様子が見られる。

〇就職・転職状況を「2~3年前より応募が増えた」企業と「2~3年前より応募が減った」企業を比較すると、全体的に「2~3年前より応募が増えた」企業の数値が高く、IT企業の調査よりも差が大きい。強みとなる自社の文化や風土を持ったユーザー企業が求人の応募を増やしていることがうかがえる。

(IT企業)

〇IT人材の流動化が進む中、「就職・転職の応募の増減」状況から、就職・転職の応募が増えたIT企業は、「採用方法を多様化」「IT人材を採用する上で強みとなる自社の文化や風土、魅力」を持っていることが明らかになった。

〇IT人材の流動性の動向を捉えるため、IT企業への就職・転職の応募状況を尋ねたところ、IT企業全体としては応募が減少している傾向が見られる。従業員規模別に比較すると、従業員規模が大きくなるに従って「2~3年前より応募が増えた」割合が高くなっているものの、「2~3年前より応募が増えた」が「2~3年前より応募が減った」を上回っているのは301人以上1000人以下の企業のみとなっている。

〇IT企業に「過去1年間にIT人材を獲得・確保した方法」を尋ねたところ、「中途採用(キャリア採用)」と回答した企業で「2~3年前より応募が増えた」が、「2~3年前より応募が減った」よりも11・4ポイント高くなっている。「関連会社(親会社・情報子会社)からの転籍、出向」も8・5ポイント、「外国人採用」も5・4ポイント高くなっており、採用方法を多様化させている企業に応募者が増えている傾向が見える。

〇就職・転職状況を「2~3年前より応募が増えた企業」と「2~3年前より応募が減った企業」を比較したところ、全体的に「2~3年前より応募が増えた企業」の数値が高く、「お互い成長する・学び合う、育てる、助け合う土壌がある」で11・5ポイント、「リスクをとって新しいことにチャレンジする」が8・8ポイント高くなっている。

2.デジタル化に携わる人材

(ユーザー企業)

〇デジタル化への取り組みが進む中、「企業のデジタル化への取り組み」状況からデジタル化で成果(収益)が出ているユーザー企業は、「処遇やワークスタイルを工夫」「IT人材を採用する上で強みとなる自社の文化や風土、魅力」を持っていることが明らかになった。

〇IoTやビッグデータ、AIなどといったデジタルテクノロジーを用いたビジネスプロセスの改善や新たな事業領域への進出、既存のビジネスモデルの転換を「デジタル化」と定義。ユーザー企業に、自社の事業(業務)のデジタル化への取り組み状況を尋ねたところ、「取り組んでおり、成果(収益)が出ている/出始めた」企業は11・6%、「取り組んでいるが、成果(収益)がまだ出ていない」企業は24・4%であり、その合計(デジタル化へ取り組んでいるユーザー企業の割合)は36%となっている。(図1)

〇デジタル化へ取り組んでいるユーザー企業に「デジタル化に携わる人材を採用する上での工夫」を尋ねたところ、その結果をデジタル化への取り組み成果状況で比較すると、「特に何もしていない」を除き、「柔軟なワークスタイル(週3~4日勤務や自宅勤務)」「例外的な処遇を提示(通年採用とは異なる処遇)、人事制度の改定(期間を限定した契約社員採用など)」で、「成果が出ている/出始めた企業」と「成果がまだ出ていない企業」の差が大きくなっている。デジタル化の成果を出している企業ほど、処遇やワークスタイルを工夫している可能性がある。

〇デジタル化に「取り組んでおり成果が出ている/出始めた」企業と「取り組んでいるが成果がまだ出ていない」企業を比較したところ、全体的に「取り組んでおり成果が出ている/出始めた」企業が高くなっている。「取り組んでいるが成果がまだ出ていない」企業との差は、IT企業と比較しても顕著である。デジタル化の取り組みで成果が出ている企業ほど、IT人材を採用する上での強みや魅力が自社にあると考えている傾向が強いことが明らかになった。

(IT企業)

〇デジタル化への取り組みが進む中、「企業のデジタル化への取り組み」状況からデジタル化で成果が出ているIT企業は、「採用方法や待遇を工夫」「IT人材を採用する上で強みとなる自社の文化や風土、魅力」を持っていることが明らかになった。

〇IT企業のデジタル化への取り組みとして「ユーザー企業に対する提案、支援、またはユーザー企業との協業でデジタル化に取り組んでいるか」を尋ねたところ、「取り組んでおり、成果が出ている」企業は6・6%、「取り組んでおり、成果が出始めた」企業は14・8%、「取り組んでいるが、成果がまだ出ていない」企業は20・9%であり、その合計(デジタル化へ取り組んでいるIT企業の割合)は42・3%となっている。(図2)

〇デジタル化へ取り組んでいるIT企業に「デジタル化に携わる人材を採用する上での工夫」を尋ねた結果を、デジタル化への取り組み成果状況で比較すると、「テクノロジーの選択権(柔軟な選択を容認)」は、「取り組んでいるが成果がまだ出ていない」に比べて、特に「取り組んでおり、成果が出ている」の割合が高い(20・3%)。また「柔軟なワークスタイル(週3~4日勤務や自宅勤務)」も高くなっている。

〇デジタル化に「取り組んでおり成果が出ている」企業と「取り組んでいるが成果がまだ出ていない」企業を比較したところ、「自社のビジョンや価値感が従業員に行き渡っている」は「取り組んでおり成果が出ている」企業の方が10・9ポイント高くなっている。

3.人工知能(AI)に携わる人材

(ユーザー企業)

〇ユーザー企業のIT部門に、AI人材(図3参照)全体について尋ねたところ、ユーザー企業の5・6%が「AI人材はいる」と回答し、12・4%が「AI人材はいないが、獲得・確保を検討している」、82%が「AI人材はいない。確保・獲得の予定はない。未検討」と回答した。(図4)

〇ユーザー企業に、今後重点的に取り組む予定のAI人材の獲得・確保方法を尋ねたところ、「AI人材はいる」企業も、「AI人材はいないが、獲得・確保を検討している」企業も、「社内の人材を育成して確保する」の割合が6割台半ばと、最も高く、次いで「即戦力として中途採用で獲得・確保する」のが5割台半ばと高くなっている。

(IT企業)

〇IT企業にAI人材(図3参照)全体について尋ねたところ、IT企業の14・3%が「AI人材はいる」と回答し、28・4が「AI人材はいないが、獲得・確保を検討している」、57・3%が「AI人材はいない。獲得・確保の予定はない。未検討」と回答した。(図5)

〇IT企業に今後重点的に取り組む予定のAI人材の獲得・確保方法を尋ねた結果を、「AI人材はいる企業」と「AI人材はいないが、獲得・確保を検討している企業」で比較すると、共に「社内の人材を育成して確保する」割合が最も高く、次いで「即戦力として中途採用で獲得・確保する」割合が高くなっている。

〇「外部委託で確保」するとした割合は、「AI人材はいないが、獲得・確保を検討している」とした企業の方が、10・1ポイント高くなっている。

4.IT人材の〝量〟と〝質〟の経年変化

(ユーザー企業)

〇ユーザー企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感の5年間の変化について、IT人材の〝量〟に対する過不足感の割合を経年で見ていくと、18年度調査結果では「大幅に不足している」とした割合が1・8ポイント上昇と、上昇幅は小さくなっているものの、年々高くなる傾向にある。(図6)

〇ユーザー企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感の5年間の変化について、17年度調査と比較すると、「大幅に不足している」割合は0・9ポイント上昇、「やや不足している」割合は0・2ポイント上昇と共に若干の上昇にとどまった。

(IT企業)

〇IT企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について、5年間の変化を見ていくと、IT人材の〝量〟に対する不足感は、16年度でやや緩和し、17年度には「大幅に不足している」とした割合が急激な高まりを見せたものの、18年度はわずかな上昇にとどまった。

〇IT企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感について、5年間の変化を見ていくと、IT人材の〝質〟に対する不足感は、16年度でやや緩和し、17年度には「大幅に不足している」とした割合が再度高まりを見せたものの、18年度はわずかな上昇にとどまった。