総務省は、毎年6月1日現在で全国の個人経営事業所(個人企業)のうち、約4万事業所の事業主および従業員に対して、事業経営上の問題点、1年間の営業収支などの経営実態などを調査し、このほどその結果を発表した。調査結果を見ると事業主の高齢化が進む中、後継者がいないとの回答が8割を超えた。また、事業に消極的な事業主が積極的な事業主を上回るなど、個人事業主の先行きに不安をもたらす結果となった。特集では、調査の概要を紹介する。
Ⅰ 営業状況
■売上高、営業利益および営業利益率の推移
⑴2018年の1事業所当たりの年間売上高
「製造業」の2018年の1事業所当たりの年間売上高は979万2000円で、前年に比べ4・8%増え、2年ぶりの増加となった。「卸売業、小売業」は1447万8000円で、前年に比べ11・2%減って、2年ぶりの減少となった。「宿泊業、飲食サービス業」は878万1000円で、前年に比べ6・6%減って、2年ぶりの減少となった。「サービス業」は、513万3000円で、前年に比べ4・1%増え、2年ぶりの増加となった。
⑵2018年の1事業所当たりの年間営業利益
「製造業」の2018年の1事業所当たりの年間営業利益は、250万2000円で、前年に比べ9・1%増え、3年ぶりの増加となった。「卸売業、小売業」は152万7000円で、前年に比べ1・7%減って、2年ぶりの減少となった。「宿泊業、飲食サービス業」は143万9000円で、前年に比べ4・2%減って、2年ぶりの減少となった。「サービス業」は154万9000円で、前年に比べ1・1%減って、3年ぶりの減少となった。
⑶2018年の1事業所当たりの年間営業利益率
「製造業」の2018年の1事業所当たりの年間営業利益率は25・6%で、前年に比べ1・1ポイントの上昇となった。「卸売業、小売業」は、10・5%で、前年に比べ1・0ポイントの上昇となった。「宿泊業、飲食サービス業」は、16・4%となり、前年に比べ0・4ポイントの上昇となった。「サービス業」は30・2%で、前年に比べ1・6ポイントの低下となった。
Ⅱ 設備投資
■設備投資額および設備投資率の推移
⑴2018年の1事業所当たりの年間設備投資額
「製造業」の2018年の1事業所当たりの年間設備投資額は40万4000円となり、3年ぶりの増加となった。「卸売業・小売業」は18万8000円となり、4年連続の減少となった。「宿泊業・飲食サービス業」は25万8000円となり、2年ぶりの減少となった。「サービス業」は26万5000円となり、2年連続の増加となった。
⑵2018年の1事業所当たりの年間設備投資率
「製造業」の2018年の1事業所当たりの年間設備投資率は4・1%で、2年連続の上昇となった。「卸売業・小売業」は1・3%で、4年ぶりの上昇となった。「宿泊業・飲食サービス業」は2・9%で、3年ぶりの低下となった。「サービス業」は5・2%で、2年連続の上昇となった。
Ⅲ 営業上の資産・負債
(省略)
Ⅳ 構造的特質
1 事業主の年齢の状況
⑴産業別推移
事業主の年齢階級別事業所分布を産業別に見ると、事業主の年齢が70歳以上の事業所の割合は、「製造業」が最も高く49・9%、次いで「卸売業・小売業」が48・8%、「宿泊業・飲食サービス業」が41・0%、「サービス業」が36・3%となった。
また、事業主の年齢が70歳以上の事業所の割合を10年前(2008年)と比較すると、いずれの産業においても上昇しており、08年に最も割合が低かった「宿泊業・飲食サービス業」が24・3ポイントの上昇と、最も上昇幅が大きかった。
2 後継者の有無の状況
後継者がいない事業所の割合を産業別に見ると、「製造業」が82・7%、「卸売業・小売業」が84・7%、「宿泊業・飲食サービス業」86・8%、「サービス業」が85・4%となった。 また、後継者がいない事業所の割合を10年前(2008年)と比較すると、いずれの産業においても上昇しており、「サービス業」が6・5ポイントの上昇と、最も上昇幅が大きかった。(図1)
3 事業経営上の問題点の状況
(省略)
4 今後の事業展開の状況
今後の事業展開について、「事業に対して消極的」な事業所の割合は、「製造業」が30・9%、「卸売業・小売業」が30・8%、「宿泊業、飲食サービス業」が25・1%、「サービス業」が18・4%となった。
一方、「事業に対して積極的」な事業所の割合は、「製造業」が5・0%、「卸売業・小売業」が10・7%、「宿泊業・飲食サービス業」が6・8%、「サービス業」が11・4%となった。
今後の事業展開は、「製造業」「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」および「サービス業」の全ての産業で「事業に対して消極的」な事業所の割合が、「事業に対して積極的」な事業所の割合より高くなった。(図2)
5 パーソナルコンピュータ(PC)の使用状況
PCを事業で使用している事業所の割合は、「製造業」が42・7%、「卸売業・小売業」が44・9%、「宿泊業・飲食サービス業」が24・2%、「サービス業」が28・4%となった。
また、インターネットに接続しているPCを事業で使用している事業所の割合は、「製造業」が37・4%、「卸売業・小売業」が40・9%、「宿泊業・飲食サービス業」が21・6%、「サービス業」が26・1%となった。(図3)
6 事業所の開設時期、現在の事業開始の状況
(省略)
7 1年間の営業(操業)日数および1日の平均営業(操業)時間
「製造業」の1事業所当たりの年間営業(操業)日数は264・0日、1日の平均営業(操業)時間は8・0時間となった。「卸売業・小売業」は294・5日、1日の平均営業(操業)時間は9・2時間となった。「宿泊業・飲食サービス業」は287・7日、1日の平均営業(操業)時間は8・1時間となった。「サービス業」は277・7日、1日の平均営業(操業)時間は8・8時間となった。
8 営業用土地・建物の所有形態の状況
「製造業」の営業用の土地・建物を共に自己所有している事業所の割合は76・9%、「卸売業・小売業」は62・6%、「宿泊業・飲食サービス業」は46・0%、「サービス業」は55・2%となった。 「製造業」の土地・建物を共に借用している事業所の割合は14・7%、「卸売業・小売業」は29・9%、「宿泊業・飲食サービス業」は48・3%、「サービス業」は38・1%となった。
9 チェーン組織への加盟の状況
チェーン組織へ「加盟している」と回答した「製造業」は無し、「卸売業・小売業」は5・3%、「宿泊業・飲食サービス業」は1・6%、「サービス業」は2・9%となった。
10 納税申告の状況
青色申告で納税申告をしている「製造業」の割合は77・2%。「卸売業・小売業」は78・2%、「宿泊業・飲食サービス業」は73・0%、「サービス業」は77・0%となった。
11 1年間の総採用・離職者数の状況
((注)1年間に採用または離職(退職)した「常用雇用者」の延べ人数をいう)
「製造業」1事業所当たりの年間総採用者数は0・19人、総離職者数は0・06人で、採用者が離職者を0・13人上回った。「卸売業・小売業」の総採用者数は0・23人、総離職者数は0・12人で、採用者が離職者を0・11人上回った。「宿泊業・飲食サービス業」の総採用者数は0・42人、総離職者数は0・19人で、採用者が離職者を0・23人上回った。「サービス業」の総採用者数は0・12人、総離職者数は0・05人で、採用者が離職者を0・07人上回った。
12 事業主の年齢による構造的特質
⑴事業主の年齢階級、雇用者の有無別事業所の分布状況
総数(各産業全体)を100とした場合の雇用者の有無別の事業所の分布状況を見ると、事業主のみの事業所は、「製造業」では37・4%、「卸売業・小売業」では36・7%、「宿泊業・飲食サービス業」では31・1%、「サービス業」では49・7%となった。
事業主のみの事業所の割合を事業主の年齢階級別に見ると、「製造業」では60~69歳が最も高く51・0%、次いで80歳以上が36・8%、「卸売業・小売業」では60~69歳が最も高く38・9%、次いで70~79歳が38・1%、「宿泊業・飲食サービス業」では80歳以上が最も高く48・7%、次いで60~69歳が38・2%、「サービス業」では50~59歳が最も高く52・7%、次いで60~69歳が52・0%などとなった。
⑵事業主の年齢階級、事業におけるパーソナルコンピュータ(PC)の使用の有無別事業所の分布状況
総数(各産業全体)を100とした場合の事業におけるPCの使用の有無別の事業所の分布状況を見ると、PCを事業で使用している事業所は、「製造業」では42・7%、「卸売業・小売業」では44・9%、「宿泊業・飲食サービス業」では24・2%、「サービス業」では28・4%となった。
PCを事業で使用している事業所の割合を事業主の年齢階級別に見ると、「製造業」「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」および「サービス業」の全ての産業で、50歳未満が最も高く、次いで50~59歳となった。それぞれの割合は、「製造業」では50歳未満が76・0%、50~59歳が69・4%、「卸売業、小売業」では50歳未満が71・3%、50~59歳が65・8%、「宿泊業・飲食サービス業」では50歳未満が51・9%、50~59歳が35・5%、「サービス業」では50歳未満が61・4%、50~59歳が38・6%となった。(図4)
⑶事業主の年齢階級、主な経営上の問題点別事業所の分布状況
総数(各産業全体)を100とした場合の主な経営上の問題点別の事業所の分布状況を見ると、「需要の停滞(売り上げの停滞・減少)」は、「製造業」では44・0%、「卸売業・小売業」では48・7%、「宿泊業・飲食サービス業」では32・0%、「サービス業」では39・8%となった。
主な経営上の問題点の割合を事業主の年齢階級別に見ると、「需要の停滞(売り上げの停滞・減少)」は、「製造業」では60~69歳が最も高く60・4%、次いで80歳以上が44・9%、「卸売業・小売業」では70~79歳が最も高く53・9%、次いで50~59歳が49・3%、「宿泊業・飲食サービス業」では80歳以上が最も高く46・1%、次いで60~69歳が37・8%、「サービス業」では50~59歳が最も高く47・8%、次いで60~69歳が42・7%などとなった。
⑷事業主の年齢階級、今後の事業展開別事業所の分布状況
総数(各産業全体)を100とした場合の今後の事業展開別の事業所の分布状況を見ると、事業に対して積極的な事業所は、「製造業」では5・0%、「卸売業、小売業」では10・7%、「宿泊業・飲食サービス業」では6・8%、「サービス業」では11・4%となった。
事業に対して積極的な事業所の割合を事業主の年齢階級別に見ると、「製造業」「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」および「サービス業」の全ての産業で、50歳未満が最も高くなっており、その割合は「サービス業」が最も高くて33・2%、次いで「卸売業・小売業」が31・5%、「製造業」が26・0%となった。一方で、「宿泊業・飲食サービス業」では19・3%と、他の産業と比較して低い割合となった。
本調査の要約・概要などはこちらを参照。https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11509863/www.stat.go.jp/data/kojinke/kouzou/index.html
最新号を紙面で読める!