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コラム石垣 2018年7月1日号 丁野朗

地方都市を旅すると、その景観にがくぜんとすることが少なくない。特に空港や主要駅からの沿道には、全国チェーンの商業施設の派手な看板が立ち並び「私は一体どこの町に来たのだろう??」と戸惑うこともしばしばである。

▼高度成長期以降、経済性が優先された結果、建築基準法や都市計画に違反しない限りどのような建築物でも許され、街並みや自然景観から地域ごとの特色がどんどん失われていった。こんな状況を見て「建築自由の国」と揶揄(やゆ)されたこともある。

▼こうした日本の景観は、観光立国を目指す上でも大きな弊害となる。そこで、安部首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(2016年3月)では、「主な観光地で景観計画をつくり美しい街並みをつくる」「20年をめどに、原則として全都道府県・全国の半数の市区町村で『景観計画』を策定する」ことが示された。

▼日本では04年に景観法が制定されたが、法律上「景観とは何か」は定義されていない。守るべき景観の定義が明確でなければ、法の保護は難しい。

▼法政大学名誉教授で「まちづくり」の用語を提唱された故・田村明さんは、景観とは「都市の景(街並み)」や「村落の景」など人工的な景を指すことが多いとされる。村落の景でいえば、屋敷林や里山、棚田などの景観であろう。

▼問題は、これらの景観は、生業(なりわい)によって維持されてきた点である。従って中心市街地や農漁村などの生業が衰退すると景観も損なわれる。だからこそ、「まちづくり」であり「むらづくり」なのである。

▼地方創生は、今日的な大きな課題だが、急がれるのは、日々の生業や暮らしの再生であろう。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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