政府は5月17日、「第16回未来投資会議」を首相官邸で開催した。会合では、林業の成長産業化、AI(人工知能)時代の人材育成、次世代ヘルスケアシステムの構築について議論した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、林業の10年後の付加価値生産額を現状の2500億円から5000億円に倍増させる政府目標について、「地域の所得向上にも極めて意義のある目標であり、必ず達成してほしい」と評価した。一方、これまでの林業政策について、「社会政策や環境政策に偏り、今ある林業の経営体をどう支えていくかに集中し過ぎているように見える」と指摘。林業政策を産業政策の方向へと大きく方針転換するよう求めた。
未来投資会議の分科会である構造改革徹底推進会合において、農林水産業を議論する「『地域経済・インフラ』会合」の会長を務めている三村会頭は、「わが国の国土の70%が森林であり、市町村の中には、大部分が森林という地域がたくさんある。従って、林業の活性化は、地方創生という面でも重要」と強調。産業としての林業の鍵となるのは、「適切な価格で品質のそろった木材を安定的に供給するという取り組みであり、消費者が求めるものをつくるというマーケットインの発想だと思う。そのために重要なのが、川上から川下までをデータでつなげることであり、ICTの導入による生産性向上だ」と語った。
また、政策の見直しに当たっては、「国自からが率先して動き、林業を変えるという意思を明確に示すことが、極めて大事」とコメント。政府が示した改革表に沿って、できるだけ前倒しで一層の改革に取り組むよう期待を寄せた。
安倍晋三首相は森林資源について、「ドローンなどの最先端技術を活用して生産性を高めれば、地域経済活性化の大きな切り札になる」と指摘。生産性の高い林業経営体の育成に向け、私有林の集積、集約を後押しするため、国有林の一定区域も含めて長期、大ロットで事業を行うことができるよう法制度の整備に取り組む考えを示した。
AI人材の育成に向けては、基礎的科目として情報科目を追加することや理学部や工学部といった学部の縦割りを超えた学位プログラムを新たに創設するなど、教育システムの改革に意欲を示した。また、社会保障を充実していく上で、「第4次産業革命技術が大きな役割を果たす」と強調。個々人が医療や介護のデータを有効活用できる環境を整備するとともに、服薬指導を含めたオンライン医療の充実に向けて、次期以降の診療報酬改定、所要の制度的対応を含めて、ユーザー目線で現状をさらに前進させる取り組みを進めるよう指示した。
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