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「下町育ちの再建王」の経営指南 「マーケティング4・0」の時代

先日知人が1800万円の退職金を手にしたそうです。奥さんは、その退職金と年金で老後はのんびり暮らそうと、ほっとしていたといいます。ところが、ご主人の考えは違っていました。600万円を投じて、学生時代からの夢であったオートバイ、ハーレーダビッドソンを買ったのです。すぐに家庭争議となったことは言うまでもありません。

このエピソードを見ても分かるように、モノの価値は、その人の状況によって異なります。現代マーケティングの第一人者として知られるフィリップ・コトラー教授は昨年、マズローの欲求階層説(自己実現理論)をベースにした「マーケティング4・0」を提唱しました。彼は、マーケティングは1・0から始まり、現在は4・0の時代にあると説いています。欲求階層説というのは、人が生きる上での欲求を「生存の(生理的)欲求」「安全の欲求」「社会的(所属の)欲求」「尊厳(承認)の欲求」「自己実現の欲求」と五段階に分けたもの。マーケティングの基本とされる考え方です。

マーケティングの最も初期の時代、「マーケティング1・0」は製品中心主義で、メーカー志向。初任給の10倍以上する白黒テレビを予約して待った時代のことで、品揃え一番さえ目指せばお客さまは喜びました。「マーケティング2・0」は、消費者志向の時代。接客力やサービス面の良し悪しで客足が変わりました。そして、「マーケティング3・0」になると、モノが余り、消費者の価値は個人的な志向や精神的満足に重きを置くようになります。価格分の価値で値段を決める、ブランド力(価値主導)の時代です。

さて、今回のテーマの「マーケティング4・0」ですが、これは自己実現のマーケティングです。日本人の多くは、「生理的欲求」「安全の欲求」「所属の欲求」「承認の欲求」の段階は過ぎ、「人間としてなりたいものを追求する」「こだわりを追求したい」といった、「自己実現の欲求」の段階にいます。「マーケティング4・0」を言い換えると、個々が幸せになるマーケティングです。さらに一段階進んで、世の発展に寄与したいと願う「利他の欲求」から、社会貢献を中心に活動している方も少なくありません。

「モノ」から「コト」へ、そして「ココロ」へと求めることが変わってきたのですから、それを満たす製品やサービスの需要が新たに生まれます。先のオートバイや、時代劇『鬼平犯科帳』に出てくる江戸のまち並みを訪ねる旅など、「自己実現のマーケティング」による商品はすでにたくさん生まれています。そこにカスタマイズした製品やサービスの提供は、企業の新たな活路というわけです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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