日商 Assist Biz

更新

まちづくりの先進事例 vol.11 〜ドイツ・ゲルリッツ〜 人口減少下のまちなか再興

にぎわいが戻った中心市街地

廃墟と化した中心市街地

ドイツでは多くの地域で人口減少が進んでおり、とくに旧東独エリアではその傾向が顕著だ。ポーランドとの国境のまち、チェコまで約30分の距離にあるゲルリッツもその一つ。1990年のドイツ統一時には約7万2千だった人口が、2014年末時点で5万4千にまで減少。周辺地域の人口も大きく落ち込んでおり、今後も減少が続くと予測されている。

ゲルリッツ中心市街地の空洞化はドイツ統一前から始まっていた。市の人口は旧東独時代から減少していたが、東独政府は郊外への大型住宅団地開発を進め、中心市街地へ充分な投資を行ってこなかったため、まちなかは荒廃し、「武器なき廃墟の創出」とまで言われた。

旧市街地の状況が好転するのは東西統一後。連邦(国)の都市改造プログラムなどを活用して建物の修復が進められ、まちなかに輝きが戻ってきた。戦災を受けなかったため古い建物が多く残っており、今日では中心市街地にある建築物の約85%が記念物に指定されている。

お試し居住に大きな反響

中心市街地の状況は劇的に改善しつつあったものの、住民を呼び戻すのは容易ではない。そこで、連邦の支援制度を利用して市が行ったのが、「お試し居住」事業だ。これは、中心市街地の空き家に家具などを完備した住居を用意し、そこに1週間住んでもらうことで、まちなか居住の良さを実感してもらおうというもの。ドレスデン工科大学や市内の大型家具店などと共同で実施したこの事業には、参加希望者が殺到し、大きな反響を呼んだ。

地域一丸となった大型空き店舗対策

まちなかの魅力は、商業を中心とする都市機能の集積による高い利便性。ゲルリッツの中心市街地でひときわ目をひくのが、1913年築の大型店舗「カウフハウス」だ。美しい内外装を持つこの建物は、戦前、東独時代、ドイツ統一後と、大きな節目ごとにその運営者と名称が変わりつつも、長く地域商業の中心施設として親しまれてきた。しかし、2009年にキーテナントの百貨店が撤退、大型空き店舗となってしまった。

後継店探しが難航する中、11年に元市長らを含む住民団体が発足。参加者は当初7人だったが、地元商業者など計200人以上が支援に加わったほか、商工会議所、市住宅公社、銀行などがサポーターとなり、カウフハウスの再生に向けた活動を続けてきた。

カウフハウスをめぐる問題は、14年になって同地域出身でドイツ北部の都市に住む医師が新しいオーナーとなったことで大きく解決に動いた。現在は新たなテナントを募り、16年の再オープンを目指して改装工事が進められている。

空洞化に歯止め

市全体の人口が減っていく中で、中心市街地の人口は一貫して増加しているのも明るいニュースだ。中心市街地の周囲や駅前にはまだ多くの空き家・空き店舗が目につくなど、決して順風満帆とは言い難いが、このまちは着実に活気を取り戻しつつある。

遠藤俊太郎/カッセル大学(ドイツ)

前の記事

カッセル大学(ドイツ) 遠藤俊太郎

フライブルクはドイツ南西部、「黒い森」に近い人口約22万の大学都市。トラム・LRT(次世代型路面電車)をはじめとする公共交通や自転車の利便性向上、公共交通指向型の住宅団…