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「下町育ちの再建王」の経営指南 お客さまが惚れ込む企業姿勢とは

栃木県那須塩原にパン・アキモトという会社があります。非常食の乾パンに代わる缶パン「救缶鳥」を通じた国際的飢餓対策支援活動が、テレビ東京の『カンブリア宮殿』などで紹介されたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

賞味期限3年の商品を2年で新品と交換、1年の賞味期限を残して引き取られたパンの缶詰はNGOを通じて飢餓に苦しむ地域に送られます。一方、交換した消費者は新品を1缶102円(税込)安く購入できるので負担も減るというこの救缶鳥プロジェクトが多くの消費者の共感を得ています。また「東北『福幸』パンの缶詰プロジェクト」という髙島屋とのコラボ企画では、12個を13個分の価格で買っていただき、その1個分は被災地に送るという試みをしました。すると、予想を大きく上回る4000セットを超える売上げを記録し、現在も継続して売れ続けているそうです。

非常に良い発想の商品ですが、どうしてここまで賛同されているのでしょうか? それは、昭和22年の開業以来、地域に密着して地道に商いを続け、大震災時には倉庫を空にして支援してきた実績があるからです。顔のわかる町のパン屋が始めたプロジェクトだからこそ、人々の心に響いたわけです。 同社の年商は5億円強。そのうち7割がパンの缶詰の売上ですが、パンを販売する2軒の実店舗は、地元の食材にこだわった人気店で、遠くからも大勢のお客さまが訪れるそうです。

それほどの人気の背景には、わざわざ車で行ってもあそこから買いたいと、お客様が惚れ込んだこの会社の企業姿勢があるのです。一度植え付けられた企業イメージは、根強くお客さまの消費行動を左右します。

例えば、某乳業メーカーが大規模な集団食中毒事件を起こしたときに社長が漏らした「私も寝てないんだ……」という一言。これは、マスコミに糾弾され、そのブランドを大きく傷つけて今も払拭(ふっしょく)できていません。一方、テレビショッピングの雄、ジャパネットたかたで個人情報漏えい事件があったとき、高田社長は「営業を半年間休み、社内の体制を整えてから外部機関の検査を受け、お客さまの信用に足る企業として生まれ変わります」と休業宣言。半年で社内改革を行い、営業再開後はわずかな期間で元の売上をしのぐ人気ショップとして復活しています。

成熟した消費社会では、商品の優劣がつけづらくなります。そのとき、お客さまが店舗や商品を選ぶ基準として大きなウエイトを占めてくるのは企業姿勢です。たやすくはないですが、目指す価値のあるものにちがいありません。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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社名:株式会社 風土

TEL:03-5423-2323

担当:髙橋

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