政府は6月21日、新たな成長戦略となる「成長戦略実行計画」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019」を閣議決定した。成長戦略実行計画は、日本商工会議所がこれまで主張してきた中小企業の生産性向上の視点が反映されたものとなった。日商の三村明夫会頭は同日発表したコメントで、「わが国を自律的な成長に導くための戦略の一つとして、『中小企業・小規模事業者の生産性向上』を盛り込んでいただいたことを、高く評価している」と今後の取り組みに期待を寄せた。(関連記事2、3面に)
成長戦略実行計画に示された中小企業・小規模事業者の生産性向上策は、①デジタル実装支援、②経営資源引き継ぎの促進、③経営者保証、④産業ごとのきめ細かな取引関係の適正化──の4本の柱で構成されている。
①については、ものづくり補助金やIT導入補助金などによる支援の引き続きの推進、②については、事業承継補助金の第二創業・ベンチャー型事業承継への支援の拡充・重点化、③については、原則として新旧経営者からの二重徴求を行わないことを明記した「経営者保証に関するガイドライン」の特則の策定などに取り組むとしている。④については、取引関係の適正化を通して、「サプライチェーン全体の中で、大企業と中小企業がコストアップを公正に負担し合ったり、大企業が中小企業のデジタル技術実装に協力したりすることで、中小企業の生産性向上を後押しし、経済全体の付加価値を高める、共存共栄の関係を構築する」としている。
骨太の方針には、観光と農林水産業の活性化が盛り込まれた。観光については、2020年に訪日外国人旅行者数4000万人の目標達成に向け、日本政府観光局による各地域の魅力の海外に対する一元的発信や地域資源を生かした観光コンテンツの開発などに取り組むとしている。農林水産業については、技術実装の推進によるスマート農業やICTによる木材の生産管理などが挙げられている。三村会頭は、「観光や農林水産業の活性化に向けた各種施策は、地域における域外需要の獲得と経済の好循環を促し、地方創生の実現に弾みをつけるものとして期待できる」とコメントした。
最低賃金の引き上げについては、「より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す。併せて、わが国の賃金水準が他の先進国との比較で低い水準に留まる理由の分析をはじめ、最低賃金の在り方について引き続き検討する」とされた。これに対し三村会頭はコメントで、「『より早期に』という表現はあるものの、中小企業が賃上げしやすい環境整備に積極的に取り組むことが前面に出されているとともに、具体的な目標年次や引上げ率が示されていないことから、我々の主張が一定程度取り入れられたと思う」と述べ、今後行われる最低賃金の審議で、足元の景況感や物価動向、賃上げ率など中小企業の経営実態を考慮することにより、納得感のある水準を決定すべきことを改めて主張していく考えを示した。
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