地域や子育て主婦の力になれる事業を
オーダーメイドジュエリー工房 リパッティ 代表 草刈 美智子
地元の役に立つ「何か」を模索
平成23年の東日本大震災発生当時、私は東京で生後半年になる娘の子育て中でした。宮城県塩釜市が生まれ故郷ですが、大学生のときから独立生計で、10年ほど東京で暮らしていました。故郷が大規模な災害に見舞われ、復興のめどもたたない中、最も敬愛する祖母が震災後すぐに他界し、ボランティアも寄付もできない専業主婦の自分にできることは何だろうと、苦しみ思い悩んでいました。
文学部出身のため、真っ先に思いついたのは文章を書くことでした。「ただ書くだけではいけない。誰かの心の支えになるような、何かを生み出さなければ」との思いでブログを開設。まず無料公開の簡単時短レシピを毎日ブログで紹介し始め、定期読者(閲覧者)を1000人以上獲得しました。このレシピを活用し、同じマンションに住む働く主婦にお弁当を作ったところ好評で、自信もつき始めました。次に少しでも収益を得ようと、ホームセンターで材料を購入し、積み木、モビールなど子どものおもちゃを作ってオンラインで販売し始めました。こうして読者に役立つものをと考案して作る中で、一番人気があったのがアクセサリーでした。「この仕事を宮城県で行えば、地元の役に立つだろう。何も持たない〝ゼロ〟の私が地元から何かを全国に送り出す。地元の商売と競合せず、需要があるなら、ビジネスとして成り立つのではないか」。そう考え、かすかな光を頼りに宮城県に戻ってきました。
資金ゼロから、内職起業
帰郷当初は乳飲み子を抱えた母子家庭で貯金もなく、頼れる人もなく、内職同様でアクセサリーを作っていました。自分の作品に顧客が付き始めたこととレシピブログで鍛えた撮影への自信だけを支えに、授乳しながら最長一日16時間、膝の上でアクセサリーを製作し、SNSやオンラインショップで製品を紹介・受注し続けました。そして徐々にオーダーメイドアクセサリー・ジュエリーの製造販売スタイルの基礎を築き、25年に工房を設立しました。しかし、一人で製作し続けたために両手が腱鞘炎となり、箸も持てない状態に。注文が入っているのに作れない││。このときほど悔しい気持ちになったことはありませんでした。
そこで、当時仮設住宅に入居していた書家の女性にお客さまへの手紙の代筆を、またママ友達にアクセサリーの基礎部分の製作を内職で依頼。どちらも内職でなければ働けなかったため喜んで引き受け、やりがいを見いだしてくれました。その後も育児中の女性たちによる「内職の輪」を広げ、今では内勤9人、内職2人体制で、子連れ出社も可能な工房となりました。独自の彫金技術で大人の女性の定番となるデザイン・価格帯の製品を開発、オンライン販売を中心に新作を小まめにリリースして売り上げも純増。28年からは海外への発送も開始しました。今後も育児中の女性が無理なく働ける環境をつくりながら、仙台発のオリジナルジュエリーを世界中へ送り出していきたいと思います。
会社データ
社名:オーダーメイドジュエリー工房 リパッティ
所在地:宮城県仙台市青葉区立町23-11 高速ビル3階
電話:022-281-8370
創業:平成25年
事業概要:ジュエリー・アクセサリーの製造販売
HP:https://lipattijewelry.shop-pro.jp/
※月刊石垣2017年5月号に掲載された記事です。
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