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コラム石垣 2020年5月21日号 神田玲子

各国のメディアから独裁的だと批判されている科学者がいる。スウェーデンの感染症対策の責任者、アンデシュ・テグネル氏である。同氏は、欧州で実施されているロックダウンとは異なる方法を採用する。介護施設や大学などを除き、普段の生活を維持することで集団免疫を形成するものだ。確かに、隣国と比較すると、スウェーデンの感染の拡大による死亡者数は突出している。しかし、ウイルスを封じ込めるのではなく、一定程度広めることで、抗体をもつ市民の数を増やし、冬以降に来るといわれる第二波、第三波に備えているともいえる。

▼こうした極端な政策の実現は、政府から独立した立場にいる科学者が、的確な情報提供や判断を行っているから可能になる。政治色を一切含まない科学者の判断には、国民の支持が集まる。

▼一方、日本はどうか。専門家会議が設置されたが、その役割と責任の所在が曖昧である。科学的な根拠を基礎とする判断と、国民生活への影響を考慮した政治的判断との線引きが、不明確なのだ。うがった見方をすれば、政治が科学者の権威を利用しているかにも映る。これでは、専門家への国民の信頼が失われ、科学の質の低下を招く。

▼感染症対策での科学の責務は、判断の根拠を提示すること、そして、政治の責務は、科学的判断も含めて国民が合意できる総合的な政策を提示することだ。相手への忖度(そんたく)や遠慮からは、言い訳しか生まれない。明確な役割分担の下で、矜持をもって互いの責務を全うすることで、それぞれの本領が発揮され、互いの良さに磨きがかかる。科学と政治の独立性が確保され、相乗効果が創出される仕組みを、この危機の時こそ構築すべきだ。

(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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