コラム石垣 2020年6月1日号 宇津井輝史

人は何よりもまず自分に関心がある。自分以外の、自分を取り巻くすべてのものが「世界」である。世界は分からないことだらけだが、それをどう認識するか。これを世界観と呼ぶ。その裏付けのないところに思想はない。新型コロナウイルス肺炎の蔓延をどう終息させ、疲弊した社会をいかに再建するか。政治家にも世界観が問われる。

▼感染拡大を収束させるのは政府の仕事である。だから各国政府は都市封鎖さえ辞さず緊急事態を宣し、国民に我慢を強いる代わりに収束への道筋を示す。前提になるのが真実を知る努力である。見えない感染の広がりを確かなデータで把握する。数値をベースに、確固たる世界観に基づいて政策を決めれば国民も納得する。だから医療崩壊を回避することと、検査不足など国民の不安に応えることとは本来両立するはずだ。

▼ことは緊急事態である。刻々と変わる事態を冷静に分析し、解決への手段を適時適切に指示する司令塔が要る。むろんぶれない方針が必須だが、未曾有の事態ゆえ方針の変更を恐れてはなるまい。科学サイドからの正確な情報をもとに、政治が果敢に政策を実行するのに必要なのも世界観である。

▼経済を回し、社会を動かすのも政府の仕事である。移動の自由、営業の自由を公共の利益のために制限するのは許されるが、補償が要る。生存権にかかわる、一刻の猶予なき事態なら、出す側にも、受ける側と同じ切迫感が要る。倒産と失業をぎりぎり食い止める気迫が終息後の復興に生きる。

▼コロナ禍のダメージは国民等しく一様ではない。生活基盤の弱い人、経営基盤の弱い小規模事業者により重くのしかかる。負担を広く分かち合い、社会の公平を保つのも大きな課題である。

(コラムニスト・宇津井輝史)

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