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コラム石垣 2020年6月11日号 丁野朗

観光は、世界中の人々の交流と絆、移動を前提とした平和産業のシンボルである。今回の世界的コロナ感染の拡大は、その前提を大きく覆してしまった。

▼4月7日の緊急事態宣言に伴い、国内外ともに人の流れは遮断された。日本政府観光局(JNTO)のデータでは、4月の訪日外国人客はたったの2900人。前年同月の292万人と比べて99・9%の減少である。まさにインバウンド観光は壊滅状態である。

▼その非常事態宣言は、5月25日に解除されたが、主要国の感染が沈静化しない限り、観光復活シナリオは、それほど簡単ではない。UNWTO(国連世界観光機関)の予測では、今後、各国が7月上旬から段階的に渡航制限を解くという最速シナリオでも、今年の海外旅行者数は約6割の減少、解禁が12月まで遅れる最悪シナリオでは約8割減。つまり年内の国際観光は絶望的という見方である。

▼こうした事態に、国内、それも近場の観光が注目され始めている。ホテルやレジャー施設などでは、「健康・衛生」「3密回避」「安全・安心」を核とするガイドラインや独自の対策を打ち出している。それは当たり前としても、少し中長期の回復・再生シナリオが不可欠である。

▼これまでのように「量」の追求が見込めない中、不特定多数を誘客するマスツーリズムの手法には限界がある。ロイヤルティーの高いファン層への訴求、さらには自らが地域と深く関わることを求めるサポーター層の発掘などが急務であろう。いわゆる観光公害(オーバーツーリズム)の弊害は、コロナ以前から指摘されていた。観光が、地域の人々の暮らしや経済に真に貢献できるモデルの再構築こそが、いま求められるものといえる。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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