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コラム石垣 2020年6月21日号 中村恒夫

「新型コロナウイルス感染拡大の影響が経営を直撃した」と九州の有力中堅企業R社の取締役は嘆く。本業のサービス業だけでなく、柱に育ててきたイベント事業が軒並み中止になり、収入が急激にダウン。地元では高水準で知られていた一時金も大幅削減することで労働組合も同意した。

▼「選択と集中」という経営戦略は、コストの削減、投資の効率化の面では確かに効果がある。しかし、集中した事業自体に先行きが見えなくなったとき、経営そのものが危うくなってしまう。そんな危険に直面した企業トップも少なくないだろう。

▼R社も本業の先細りが見える中、イベント事業を拡大すると同時に、経費圧縮を目指し競争企業と共同で部材の調達を模索していた。一連の経営努力もコロナウイルスによって台無しにされてしまった。先の取締役は「基本に立ち返り、本業をてこ入れしたいのだが、うまくいかない」と話してくれた。理由は簡単だ。事業ごとの採算性を重視する過程でスタッフも専門化させた結果、異動させにくくなったのである。

▼働き方改革に合わせて、従業員の専門性が重視されるようになった。「その道のプロ」になれば転職が容易になり、雇用の流動化を促すと期待されている。ところが外的な理由で仕事自体がなくなれば、専門性は意味を持たなくなる。

▼日本の経営者は従業員に対し一定の雇用義務があり、欧米のように簡単には解雇できない。トップは会社の実情を従業員に知らせるために、担当外の業務についても情報を伝えるべきだ。緊急時に「社内転職」できるように、コストがかかっても従業員各人の能力を高めておけば、長い目で見れば、経営の安定に資するのではないだろうか。

(時事通信社・常務取締役中村恒夫)

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