仕事も育児も自分らしく
株式会社 ビズホープ 代表取締役 寺田 望
妊娠中に起業を決意
私は4年間、静岡県の沼津市役所に勤務し水産業支援の仕事をしていました。当時はイベント企画、情報発信などを通じ沼津への観光客を増やすための仕掛けづくりをしていたのです。しかし、次第に「行政側だとどうしてもできることに限りがあるな」と考えるようになりました。そこで実践的な企業支援のノウハウを学ぶため、富士市の産業支援施設を運営するコンサルティング会社へ転職したわけです。3年で数千件の新規事業立ち上げに携わり、特にメディアに関する広報支援をしていました。
その後は地域活性化の仕組みを学ぶため「富士宮やきそば学会」へ参画。イタリアで開催された日本大使館主催の日本の食文化紹介イベントで事務局を担当し現地へも同行しました。そんな中で、もっと自由な立場で、思い切って仕事をやってみたい、さらに企業の力になりたいという思いが強くなってきました。そんなとき、大手水産卸会社から広報支援の依頼を受けました。そのようなことがきっかけで、妊娠中でしたが、平成25年に事業を立ち上げたのです。
自身の子育て経験から事業の着想を得る
妊娠中に起業し、子育てとの両立を模索しながら仕事を進めていく上でさまざまな困難がありました。仕事に充てる時間をとる難しさ、事務所が自宅で、打ち合わせなどができない不便さを痛感したのです。仕事の打ち合わせのために拠点が欲しいと思っていたところ、ご縁があって空き事務所を借りることができました。そして、ここにたくさんのビジネスを集め、発信する場所にしたいと考えました。子どもと一緒でも商談や仕事で利用可能な拠点や同じ悩みを抱える地域の女性起業家同士のつながりの必要性を強く感じ、シェアオフィス「コトリスラボ」の事業モデルを着想しました。コトリスラボの由来は小鳥やリスのように小さくても小回りを利かせお客のニーズを先回りして、能力を発揮できる女性のイメージからです。
コトリスラボには、キッズスペースを併設するシェアオフィスのほか、2つのミーティングスペースがあります。会員はシェアオフィススペースで作業する間、子どもをキッズスペースで遊ばせておくことができるのです。子どもを抱いてのミーティングなどにも対応できるよう、常駐のスタッフが適宜サポートに入ります。月平均50人の利用者のうち3分の1が子連れ利用です。弊社では広報コンサルの傍ら、相談対応やセミナー開催、女性起業家と企業とをマッチングする「ヒロインストア」など自主事業にも取り組んでいます。
利用者はウェブデザイナー・パティシエ・翻訳家・カメラマン・税理士など女性起業家たちです。子育て中でも、仕事を継続していけるようにお互いに助け合っています。地域の遊休不動産と生かされていない女性人財とをつなぐこのモデルは全国で応用可能だと思います。今後は視察などを受け入れ、女性が子育てしながら、仕事を続けていけるように健康的に楽しく働ける場を提供したいですね。
会社データ
社名:株式会社 ビズホープ
所在地:静岡県三島市
創業:平成25年
事業概要:コンサルティング業(女性起業家のための子連れ可能なシェアオフィスの企画運営・支援事業、広報を基軸とした中小企業へのコンサルティング事業)
※月刊石垣2016年2月号に掲載された記事です。
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