串間市の東部は日向灘を望み、南部は志布志湾に面しています。海岸線は日南海岸国定公園に指定され、気候は冬場でも比較的温暖です。人口は昭和29年の市制発足当時の半分ほどの1万9000人となってしまいましたが、時がゆっくりと流れる自然豊かな地方都市です。日向灘と志布志湾を分ける都井岬には、100頭あまりの野生馬が生息しています。この馬は元禄10(1697)年、高鍋藩主の秋月公により軍馬として放牧された日本在来馬で、今は国の天然記念物に指定されています。ゴールデンウイークのころになると、「春駒」と呼ばれる子馬が誕生し、愛くるしい姿を見せ、訪れる観光客を癒やしています。また、ここはソテツの自生地の北限でもあります。種子島が見える日もありますし、近くにはイモを洗うニホンザルが住んでいる幸島もあり、見どころがたくさんです。
当社は昭和3年に先々代が姥ケ迫焼酎株式会社として創業。昭和46年に社名を松露酒造株式会社に変更しました。80年以上にわたって原料であるサツマイモの品質にこだわり、古の杜氏の蒸留法を継承。串間の地で、焼酎好きな人が求める本格芋焼酎をつくり、伝統の味、郷土の味を守り続けています。中でも「松露104号」は「幻の焼酎」といわれています。これは限られた特約店(東京で4店舗、宮崎県では1店舗)だけに出荷しているもの。地元でも、口にした人は多くありません。
私自身は東京の大学を卒業後、都内の酒店で修業を積みました。その後、松露酒造に昭和44年に入社。平成2年11月からは代表取締役を務めています。また、22年からは串間商工会議所の会頭に就任していることもあり、飲酒の機会が多くなりました。串間の人たちには「体を休め、明日の元気の源となる『地元の焼酎』で乾杯を」と呼び掛けています。焼酎には地元の農産物を使っています。地域の農林水産業の発展が商工業の振興につながり、地域内の再投資の力、豊かさを高めると考えています。これからも会社、商工会議所を通じて地域の発展に貢献していきます。
最後に、今年の「春の叙勲」で瑞宝双光章をいただきました。これは長年にわたる消防団活動が認められたもの。私を支えてくれた多くの人たちにあらためてお礼を申しあげたいと思います
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