江津市は島根県のほぼ中央部に位置する中国地方最大の川、江の川河口の港町で、人口2万4000人の小都市です。現在の市域は江戸時代、大森代官所(天領)、浜田藩、津和野藩の三つの領地に分かれ、その中心部で交通の要衝、江津本町(天領)は、北前船の寄港地として栄えました。幕末の第二次長州戦争で浜田藩が敗退、大森代官も逃走したことから、明治維新を前に長州藩の統治下に置かれ、江津本町の陣には維新十傑の一人、大村益次郎も滞在しました。
昭和に入ると、江の川の水を生かすパルプ工場や製糸工場が進出、特産の石州瓦とともに工業都市として発展し、今日に至っています。
弊社は昭和13年、土木建築請負業として当市で創業、本年で80周年を迎えます。創業当時は「国家総動員法」が公布されるなど、混とんとしている時代でした。その後、戦中、戦後、高度成長期、バブル経済崩壊、過疎化など、時代の大きなうねりに耐え、総合建設業として「建設業の社会的使命を強く自覚し、良質の社会資本の創造」という経営理念の下、土木工事、建築工事、しゅんせつ工事、水道施設工事、さらには一連の建築の全てに仕事の可能性が広がっています。それが総合建設業の魅力であり、近年では同業者と連携し、風力や太陽光発電など再生可能エネルギー分野への取り組みも始めました。これまでの歴史の中で培ってきた経験から「過去は生きる力であり、未来は生きるためのエネルギーである」を社訓に、また「以心伝心」を合言葉に社業に邁進しています。
当市は現在、江津駅前地区を中心とした市街地活性化事業に取り組んでおり、民間の主要事業であるホテル建設は、当所が主体となって推進しました。運営会社の増資募集には、法人93社、個人144人から出資金満額となる申し込みをいただき、平成27年12月、6階建て、客室71室のビジネスホテルがオープン。高い稼働率を維持し、年間2万6000人余の利用があることから、同駅前の交流・経済人口が増加しています。また、28年8月には市民交流施設が完成。周辺道路の整備が進む中、多数の新規商業者の開業や来街者増につながっています。
私の座右の銘は、中国の故事に由来する「先ず隗(かい)より始めよ」です。「遠大な事業を成し遂げようとするなら、足元から着手すべきだ」を念頭に、地域社会の発展のために頑張っていきたいと、日々心しているところです。
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