先週、スーパー台風18号は沖縄の久米島を襲い、北上して韓国南部に甚大な被害をもたらした。台風号は沖縄の南海上で発生したと思ったら、次の日には九州沖に到達して西日本に記録的な大雨をもたらした。台風10号は103年ぶりに東北地方の太平洋岸に上陸した。それまでの動きは迷走そのものでブーメラン台風とも呼ばれた。
▼その名前の由来は、まず発生した場所が八丈島の東海上とまさに日本列島と目と鼻の先であった。その後、台風は北上するどころか南西方向の沖縄の東海上に移動した。そこで海水から膨大なエネルギーをもらって巨大化した。そして、一度来た道をたどって北上し、先に述べたように東北地方に上陸したからである。
▼欧州中期予報センターは台風10号がこのようなコースをたどることを、台風が沖縄の東海上で停滞している頃から既に予測していた。ただ、幸いなことにこの台風が伊勢湾台風並みに巨大化するとしていた当初の予測の方ははずれた。
▼今年の台風がこのように例年にない異常な振る舞いを見せたのは、日本近海の海水温が例年と比較してかなり高くなっているからである。北極海も2度以上高くなっており、氷が大幅に溶け出している。そのため、今ではオホーツク海経由でオランダのロッテルダムまで行ける北極海航路が開かれているほどである。
▼仮に、北極海の氷が消滅するとグリーンランド沖で沈み込んでいた深層海流の地球規模の大循環が異常をきたすのではないか。そうなればさらに世界的な異常気象の頻発が懸念される。先週、温暖化対策の国際的枠組みであるパリ条約が発効の運びとなった。この条約には違反しても処罰規定がないだけに各国の誠実な実行が求められる。
(中山文麿・政治経済社会研究所代表)
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