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コラム石垣 2016年10月21日号 神田玲子

市場での「競争」について、進化生物学者から異論が出されている。ダーウィンの自然淘汰は、優れた生物が生き残ってきたというのではなく、偶然による環境変化に適したものが生き残ったというものだ。優れていたから生き残ったのではなく、たまたまだったからというのだ。

▼人間の本質は、闘争心ではなく、共同作業にこそあると進化生物学者の長谷川眞理子氏は述べている。金融危機を起こした大手金融機関やグローバル企業の課税逃れに対する怒りも、道義的に許されない行為だという人間の内面からの抗議である。市場での競争によって生産性は向上し、社会は豊かになるが、人間の共同作業を支える上で重要な公平性・平等といった倫理観が強固になるわけではない。確かに、市場で勝てば正当であるという考え方が跋扈(ばっこ)し、その結果、社会に亀裂が入ってしまったという見方も一理ある。

▼生物進化学者は、競争そのものを排除すべきだと主張しているわけではない。問われているのは、市場でのルール(法律)に基づいた競争で勝ち取った利潤であったとしても、道義に反する形であれば不当だと見なすべきではないか、ということである。

▼しかし、道義を法律で一律に縛ることには限界がある。そのため、法律を補完するための自主的なルールが必要となる。具体的な方法としては、企業の行動の原則を示すようなコードを作成する、さらに、社会的な意義の点から第三者がコードや企業活動を評価する仕組みも考えられよう。市場でも、人間が共同生活を送る上で必要となる道義性が確保される一定のルールが必要となっている。それは、競争が激化するグローバル化を進める上で不可欠なものとなっている。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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