コラム石垣 2016年10月1日号 中村恒夫

高度成長期には「結果を出せばいい。昼間にどこで油を売っていても構わない」という営業現場が少なくなかったとされる。会社への連絡があまりなくても、大きな商談をまとめてくる営業マンは評価され、相応の報酬を受け取っていた。日々の営業報告書を提出するように求められる現在では、あり得ないことだ。

▼労働問題を専門とする弁護士の話を聞く機会があった。厚生労働省の資料によると、労災補償認定状況を分析した結果、脳・心臓疾患では40~50代が多いのに対し、うつ病をはじめとする精神疾患では20~30代の占める割合が大きいと分かった。「能力・実績を重視した人事制度導入」に加え「インターネット環境の整備」が若手社員への負荷を高めているとみられる。

▼営業ツールとして支給したタブレット端末や会社保有のスマートフォン。便利な半面、会社と常時つながっているような圧迫感を覚える人も多いという。心ない上司が社の備品であることを理由に、連絡がつかない部下を責め立てるケースがある。仮に商談中であったとしても、である。

▼大都市圏では通勤時間の長さが労働者にとって負担となっている。このためワークライフバランスを図る上で、在宅勤務の制度を整える企業も増えている。一方で、そこに落とし穴があるという声も聞く。裁量労働の名目で、膨大な仕事を押し付けられ、通勤していた時よりも、休憩時間の確保が容易でなくなる例が出ている。

▼IT(情報技術)は本来、作業効率や労働生産性の向上につながるべきもののはずだ。会議や書類が一向に減らない中で、使い方を間違えれば、従業員の長時間労働が続き、心身の健康まで損ないかねない点に留意すべきだろう。

(時事通信社取締役・中村恒夫)

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