コラム石垣 2016年4月1日号 丁野朗

3月半ば、東京・大手町に全国16地域が集まり、それぞれの地域が描いたストーリーを披露した。経済産業省が昨年度支援した「地域ストーリー事業」(地域資源活用ネットワーク形成支援事業)の報告会を兼ねたシンポジウムである。北は北海道富良野市、倶知安町・ニセコ町から、南は沖縄県本部町・今帰仁村まで、実に個性豊かでワクワクするプレゼンテーションの連続であった。

▼一方、昨年からスタートした文化庁の「日本遺産」は今年第二期目に入る。すでに募集を終え、全国67地域のストーリーがエントリーされている。今後、審査を経て4月下旬には新たな地域が認定されるという。

▼それにしても、なぜ今、地域ストーリーなのか。もちろん、地域側からすれば、他地域との優位性を示す「地域ブランディング」や「シティーセールス」「観光振興」が狙いである。観光は、物語がなければ顧客の心を惹きつけられない。典型的な「物語消費」である。顧客は地域の物語に共感し、自らを主人公に見立てて旅を楽しむ。経済産業省の「地域ストーリー事業」では、物語に共感する顧客像(ペルソナ)を描き、同じ思いを持つ顧客層(ターゲット)に向けたプログラムづくりが競われた。マーケティングの観点から言えば、実に優れた取り組みである。

▼しかし、地域の物語づくりには実はもっと大切な意味が隠されている。それは地域住民自身が自らの地域の歴史や隠された物語を再発見し、地域の歴史と誇り、さらに言えば自信を取り戻すことである。人口減少と経済の疲弊が進む中、多くの地域は自信を失っている。だからこそ自らの地域の歴史と誇りの見直しが必要なのである。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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