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コラム石垣 2016年4月11日号 中村恒夫

グローバル化の荒波は日本を代表するメーカーをも飲み込み、会社の身売りや重要部門の売却につながるケースが出てきた。最終組み立てメーカーの資本構成が変われば、一次下請け企業だけでなく、数多くの部品メーカーが影響を受ける。最大の納入先がある日突然、注文を取り消してくる事態すら想定される。

▼池井戸潤さんの直木賞受賞作「下町ロケット」に登場する中小企業のように素晴らしい特許を保有しているのならともかく、そうでない企業にとって、大手企業の浮沈はまさに死活問題となる場合がある。マーケティングに詳しい慶応義塾大学大学院の須藤実和特任教授は「『技術』を幅広く捉えて、その棚卸しをすることが重要」と指摘する。特許という確立された技術でなくても「自社だからできる」ものを書き出してみてはどうかというのだ。

▼「極めて短い納期に対応できる」「多彩な部品製造能力がある」といったことでも構わない。経営陣や技術者だけでなく「社内の意見を結集することが大切だ」と須藤氏は強調する。全社で「強み」を共有できれば、取引先に異変があっても柔軟な対応策を講じやすくなる。

▼一方で、納入先の経営状態を見極める努力も欠かせない。先代トップ以来の長年の関係を主張しても、相手の資本が変われば受け入れられない恐れがある。むしろ、自社で納入先を選別するぐらいの態勢を整えるべきだろう。業界内のうわさ話に頼るのではない。「マーケットインの考え方に基づき、消費者のニーズを先取りした技術開発に取り組んでいるか」「シェアや売上高に固執しすぎてないか」を中心に分析すれば、将来性についてもおのずから一定の結論にたどり着けると思う。

(時事通信社監査役・中村恒夫)

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