ホテルの階下で不意に鳴り響いた銃声と爆発音に続き、ドアの隙間から入り込んでくる白い煙。出張先のインド・ムンバイでテロに遭遇したのは、2008年11月26日の夜でした。多数の死者が出たと知ったのは後のことになりますが、濡れたタオルで口を押さえながら必死に非常階段を下り、なんとか脱出することができました。見ず知らずのインド人実業家に一晩オフィスでかくまってもらい、翌日は現地に駐在していたメガバンクの支店長宅でお世話になりました。この時ほど、人と人とのご縁、他者の助けが身に染みたことはありません。そして私が千葉銀行の頭取職を拝命したのは翌年3月。いまだに忘れられない人生の転機となる出来事でした。
98万人の人々が暮らす千葉市は、東京と世界への玄関口・成田空港との中間に位置する政令指定都市です。まもなく市制100周年という節目を迎えます。国内最大級のコンベンション施設である幕張メッセでは国際会議や展示会のほか、コンサートやフリーマーケットなどバラエティーに富んだイベントが開催され、国内外から多くの人が訪れます。
また、プロ野球やJリーグのチームが本拠地を置くなど、スポーツへの関心が高い都市でもあります。1年延期となりましたが、東京オリンピック・パラリンピックでは合計7種目の実施が予定され、当所では関連イベントの開催や、商店街でのバナーフラッグの掲出など大会を盛り上げる活動に力を入れてきました。大会の成功とともに、全ての人が支え合う共生社会の実現を目指しています。
ところが世界は今、新型コロナウイルスの流行に直面し、人々の生活や政治・経済に深刻な影響を及ぼしています。
当行ではテレワークや交代勤務などで業務を継続しながら、国や自治体、商工会議所などさまざまな関係者と連携し、地元経済を支える事業者の支援に真正面から取り組んでいます。なかなか先を見通せない状況で不安を抱えている方々に少しでもお役に立てるよう、職員一丸となって地域に寄り添ってまいります。
目下、感染拡大の防止が最優先され、その手段として「他人と十分な距離を取る」ことを徹底するように強く求められています。この混乱が収束して日常が戻ってきたとき、人と人とのご縁や交流というものがとても価値のあるものだと、改めて実感することになりそうです。
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