女性の雇用拡大を目指す動きが活発化している。少子高齢化が進む中で、当然のことかもしれない。一方で、結婚後働く女性を取り巻く環境は依然として厳しい。
▼ケース1=ある公的機関で働く女性は2度の出産を経て時短勤務を続けている。保育所への迎えが必要だからだ。最初の出産のときは快く受け入れてくれた職場も2度目は様子が違った。女性のキャリアとは全く異なる肉体労働が多い部署へ異動となった。その部署は組織には絶対に必要だが、子育てで日常的に疲労が重なっている母親に向いているとは考えにくい。もちろん、辛くても退職するつもりはないという。
▼ケース2=2人の男の子を抱える知人女性は、夫の単身赴任を機に働くことを考え始めた。しかし自動車の運転免許以外に資格のない彼女にとって、幼稚園児の送り迎えをしながらできる仕事を見つけるのは容易でない。
▼ケース3=第二子を出産した女性は、字がきれいなことが評価され、通信添削の仕事を獲得した。育児と並行して添削をしていると、眠る時間を削るしかなく、時には徹夜してしまうことがある。
▼ケース4=派遣制度の規制強化で多様な仕事をさせることが難しくなった中堅企業は、派遣社員の雇用形態を契約社員に切り替えた。契約社員には期間の制限があり、期限を理由に打ち切りを通告された女性の中には、新たな職場を見つけられない人が多い。
▼こうした個別事例を理由に、女性の雇用拡大に異論を唱えるつもりはない。男女雇用機会均等法施行から四半世紀を経て、大企業に女性取締役が誕生し始めたことでも分かるように、雇用拡大にも時間を要する。それには個々の職場で課題を解決していく努力が望まれる。
(時事通信社経理局長・中村恒夫)
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