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コラム石垣 2014年4月21日号 丁野朗

何気なく用いられる「観光まちづくり」という用語。しかし、その意味は実に多様である。そもそも観光とまちづくりは系譜が異なり、担う主体も異なっていた。最近、ある県の地域振興部局の講演会に呼ばれたが、観光関係者はほぼいなかった。今でも行政では「観光」と「まちづくり」の間に大きな壁があるようだ。

▼観光は狭義のホテル・旅館や旅行業だけでは成立しない。観光客の足となる交通機関はもとより、観光に係る情報関連産業や「食」の関連産業これら食材を提供する農林漁業、アウトレットモールや道の駅、さらには地元の商店街などの商業機能などが深く関連している。「観光は裾野が広く経済波及効果が大きい」とか「観光は地域の総合力が試される」と言われるゆえんでもある。

▼それにもかかわらず観光がまちづくり(地域づくり)と上手く連携できていないのはなぜか。それは、観光が依然として「一部の観光業者のもの」といった認識が地域に根強く残るからであろう。特に温泉などエリア的に独立した観光地では、多くの市民が住む「地元」との連携が弱かった。観光事業のシンボルでもある大手旅行業者なども、その拠点を大都市に置き、地域との接点が薄かった。

▼一昨年来、東京の中野区やベッドタウンの埼玉県越谷市などに「観光協会」が相次いで発足した。ともに従来型の観光事業者は皆無である。越谷市は東京ディスニーリゾートを上回る年間5000万人を集客する大型商業施設がある。地域にとっては、観光だけでなく多様な「集客交流」が新たな産業創造やビジネスチャンスにつながる。改めて観光とは何か、まちづくりとは何かが問われる時代になっている。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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