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コラム石垣 2014年4月11日号 宇津井輝史

現在の世界秩序すなわち国境のあり方は絶対的なものか。それともずっと先の最終目標に至るまでのプロセスに過ぎないのか。国際社会が今の国境を絶対不可侵としたのは、二度と戦争を起こさないためである。それでも神が引いた線ではないから不満を残す。

▼今は別の国に暮らす自分は本来あの国に属していると考える人がいて、今は別の国の領土だが、あの土地は本来自分たちのものだと考える政府がある。心の中でそう考えるのを禁ずることはできない。そこに民族という物語がある。それは時にナショナリズムという厄介なものに点火する。

▼「目覚めよというメッセージは、階級に届けられるはずであったのに、ひどい郵便の誤配のために、民族に配達されてしまった」と言ったのはアーネスト・ゲルナー(『民族とナショナリズム』岩波書店)である。民族という意識が生まれたのは19世紀。フランス革命は王制を倒す一方で、人々と王権の間にあった中間団体を解体した。市民は自立性を奪われて「国民」になった。そうして各地に生み出されたのが国民国家である。以来私たち人類は「なに人」であるかにこだわってきた。カール・シュミットの言を借りれば「抽象的な人間なんていない。いるのはドイツ人やロシア人だ」ということになる。

▼別の場所に住む自国民の保護はいつも戦端を開く口実になった。だが国境は平和を維持するインフラである。過去のどんな時代とも比較にならぬ犠牲者を出した二度の世界大戦を経て確定したのが今の国境である。だから動かしてはならぬと決めた。

▼ユートピアへの道は国の指導者によって違う。国際社会がウクライナの紛争を回避できるか。大きな試金石が目の前にある。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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