コラム石垣 2014年4月1日号 神田玲子

日本は確実に到来する人口減少におびえている。周囲の小学校が閉校となり、空き家が増えているのを見ると、不安な気持ちになる。しかし、人口の減少だけを問題にすることは本質を見失うことになりはしないか。

▼アメリカのペンシルバニア州にあるピッツバーグは、19世紀後半から鉄鋼の町として繁栄。鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーが製鉄で財をなし、大学を設立したことでも知られる。

▼その後、1970年代に日本との競争に敗れ、鉄鋼産業に偏っていた地域経済は大きな打撃を受けた。しかし、現在は、ロボット、バイオ、金融、医療産業を中心とした経済発展で見事な復活を果たしている。

▼人口の推移をみると、市内の人口はピーク時(50年)と比べて5割以上の減となり、都市圏全体で見てもほぼ横ばいである。現在も、他の地域と比べて人口規模では有利な状況ではないものの、高学歴者の呼び込みに成功し、頭脳の流入が起きている。所得水準は高く、世界金融危機時の影響も軽微であったことから、オバマ大統領がサミットの開催地に選んだほどだ。

▼この例からも明らかなように、日本の地域が直面する真の課題は、どのようにしてグローバル経済のなかで競争力を維持していくかということに尽きる。それは、新興国とのコスト削減競争で競い合うことではなく、他の国が簡単には追随できない産業に転換することであることはピッツバーグの例からも明らかだ。

▼そのためには、地元の強みを正確に把握し、周辺地域、あるいは外部とのネットワークを構築して、多様な「知」をつなげる必要がある。事業を構想化する人、技術がわかる人などと、企業との協働が各地で起きる仕組みが必要だ。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査部長)

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